2005年6月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張

「骨太方針2005」

社会保障は小さく負担は重く


 小泉内閣は二十一日の閣議で、経済財政運営の基本方針を示す「骨太方針二〇〇五」を決める予定です。

 「骨太方針」が前面に押し出しているのは、「小さくて効率的な政府」をつくることです。

 そのための中心課題に掲げているのは医療など社会保障の給付削減と公務員の定員・人件費の縮小です。大増税を国民に迫るためには、これらが不可欠だと位置付けています。

矛先は国民のくらしに

 「小さくて効率的な政府」という表現は、あたかもムダ遣いを一掃するかのような印象を与えますが、その矛先は、もっぱら国民のくらしに向けられています。

 「骨太方針」をとりまとめた経済財政諮問会議や与党の議論で焦点になったのは、社会保障費、とくに医療費の伸びを経済成長率よりも低く抑えるということです。最終的な文面では表現をぼかそうとしていますが、狙いは変わりません。

 経済が悪化したときこそ、社会保障の出番です。日本の景気がなかなか回復しないのは、くらしを支える社会保障が貧弱すぎることも重要な原因となっています。

 医療費の増加には、雇用・労働条件の悪化によって肉体的・精神的な健康悪化が国民規模で進んでいること、高齢化が進展していることなど社会的な要因が強く働いています。数年来の医療費値上げで受診の抑制が広がった結果、軽い病も重病化して、かえって医療費を増やしている悪循環も起こっています。

 こうした実態を無視して、経済成長の範囲に給付を抑制するのはあまりにも乱暴です。

 経済財政諮問会議で、奥田碩トヨタ自動車会長(日本経団連会長)は次のようにのべています。「“身の丈”に合った社会保障制度でなければ持続可能ではない」

 “身の丈”が経済規模だとするなら、日本の国民は、欧州諸国と比べて格段に低い社会保障給付しか受け取っていません。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、国内総生産(GDP)に占める社会保障給付の割合は、日本の17%に対してフランス、ドイツ、スウェーデンは28―30%に上ります。医療分野の給付では、日本はこの三カ国はもとより、アメリカよりも低い水準です。

 給付を経済成長以下に抑えるのは、社会保障を最低の水準に固定化することにほかなりません。

 公務員の人件費や人口比の人数も日本は主要国の中で最低です。

 「骨太方針」は、「国民負担の増加をめぐる議論はいずれ避けられない」と所得税や消費税増税を示唆し、「その前に、政府自らが身を切り、効率化を図ることが不可欠」としています。「政府自ら身を切っているのだから増税は仕方がない」と国民に思わせたいのでしょう。

 しかし、身を切られようとしているのは国民です。

「大きな」ごまかし

 「小さな政府」というのは「大きな」ごまかしです。「骨太方針」は公共事業のムダ遣いを温存し、五兆円もの軍事費は聖域にしています。

 大企業のために法人課税引き下げの検討を盛り込んでいます。

 「骨太方針」策定は五回目です。大企業やアメリカの要求を優先し、国民のくらしをないがしろにする姿勢がますます露骨になっています。

 勤め人も自営業者も、公務員も会社員も、いずれも「身を切る」標的であり、給付削減と負担増の標的です。不当な攻撃をはねかえす共同の輪を広げることが重要です。


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