2005年6月21日(火)「しんぶん赤旗」
インド洋大津波で国連調査
サンゴ礁が防壁に
マングローブも“活躍”
インド洋大津波から二十六日で六カ月。この日を前に国連環境計画(UNEP)は、スリランカとモルディブの環境に大津波が与えた影響についての現地調査結果を公表しました。(夏目雅至)
スリランカとモルディブ
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両報告とも、大量の廃棄物や飲用水汚染など災害が残した大きな影響とともに、海岸の植生やサンゴ礁が健全に残っている地区では被害が少なかったことを明らかにしています。
報告は十七日にコロンボとUNEP本部のあるケニアのナイロビで発表されました。
スリランカについての報告は、UNEPが同国の環境天然資源省とともに行った調査に基づくもの。詳細な地理、生態系調査が被害を受けた海岸線のほとんど全域にわたって一キロごとに八百地点で行われました。このうち七百五十カ所以上で有毒物や塩分での汚染がみられました。
井戸使えず
津波で生みだされたがれきは五十万トン以上にのぼり、建物の破片や海の砂などが多くの地点で排水路につまるなどの被害が出ています。また、浸水や農地の流失が起き、蚊に媒介される疾病の危険も増大しています。
また塩水の汚染で一万五千以上の井戸が使用不能になっており、飲用水の供給量が減少しています。
長年にわたる採掘などにもかかわらず、サンゴ礁が健全に保たれているところでは津波の緩衝物として働いて被害が軽減しています。また海岸では最前面のマングローブは大きな損傷を受けましたが、背後のマングローブの林はそのまま残り、津波のエネルギーを吸収したという現象がみられました。
ヤラ自然公園などの保護地区を含むいくつかの地点ではウチワサボテンなどの外来種の植物が繁殖しているといいます。
有毒物質も
モルディブについての調査はUNEPと環境建設省が合同で実施。津波で運ばれてきた約二十九万立方メートルのゴミが人間の住んでいる六十九の島に蓄積しています。がれきには屋根からでた有毒物質のアスベストが含まれており、処理が困難となっています。
同国では飲用水は通常、雨水によっていますが、地下水が塩水や下水施設の破壊で汚染。高度の微生物汚染がみられた個所もあったといいます。
また海岸地区では土砂の流失や作物を含む植生の破壊がみられました。またスリランカと同じようにサンゴ礁が津波の防壁となった事例も見られたといいます。
UNEPのテプファー事務局長は両報告書の公表に当たり、次のように語っています。「インド洋大津波はわれわれがこれまで無視していた重要な教訓を教えてくれた。われわれが破壊してきたサンゴ礁やマングローブ、海藻などの生態系はぜいたくなものではなく、われわれの住居や生命を守るものだった。海岸や住居の再建に当たっては経済、社会的な要素とともに環境の問題を考慮に入れるべきだ」