2005年6月23日(木)「しんぶん赤旗」
中南米ですすむ「参加型民主主義」とは?
〈問い〉 不破議長の『党綱領の理論上の突破点について』の中にあるラテンアメリカの「参加型民主主義」とはどういうものですか?(大阪・一読者)
〈答え〉 選挙によって代表者を選び、その代表者(議員)が集まる会議(議会)がその国や地域の問題を討論し、決定する―こうした政治の仕組みは一般に「代議制民主主義」といわれます。しかし、選ばれた議員らが、当選後は、有権者の意思を踏みにじって勝手にふるまうこともあり、これはラテンアメリカでも政治不信の広がる原因の一つになっています。
ラテンアメリカでは近年、こうした「代議制民主主義の弱点を補う」という発想から、選挙以外にも政治や行政に国民の声を反映させる仕組みを「参加型民主主義」として重視する流れが生まれています。具体的には、住民や国民一人ひとりが、公的事業の内容、予算の決定などにできるだけ直接参加できるよう保障する制度のことです。
ラテンアメリカ各国では近年、首都を含む多くの都市で、左派政党が政権を担う地方自治体が増えています。ここでも共通して重視されているのは「参加型民主主義」です。
ベネズエラの憲法では「多民族、多文化の国民が主人公の参加型民主主義社会」の確立を国の目的として掲げています。チャベス政権下の改革では、貧困地域の無料の医療制度でも、政府が決めたことを上から実行するのではなく、住民が意見を出し合える場を設け、運営の多くの部分が住民の代表者らにまかされています。同国政府は、米州機構(南北米州の35カ国で構成)が貧困や飢餓の一掃など社会的な諸問題の解決をうたう基本文書「米州社会憲章」を採択することを提案し、その中に「参加型民主主義」を追求するとの文言を盛り込むよう強く主張してきました。これにたいして、住民参加の民主主義が広がることを快く思わないブッシュ政権は、ベネズエラの主張に強く反対し、01年、カナダ・ケベックでの同機構会議ではこの言葉を否決。しかし、各国で「参加型民主主義」の実践が広がり、04年1月の米州機構会議ではこの言葉を初めて盛り込んだ決議を採択しました。米国の主張がラテンアメリカで「敗北」した一例といえます。(啓)
〔2005・6・23(木)〕