2005年6月26日(日)「しんぶん赤旗」
米でBSE2頭目
日欧検査方式で逆転“クロ”に
「安全」の主張 覆る
【ワシントン=浜谷浩司】ジョハンズ米農務長官は二十四日、米産牛のBSE(牛海綿状脳症)感染が英国の研究所による検査で最終的に確認されたと発表しました。米国でのBSE発生としては、カナダから輸入後二〇〇三年十二月にワシントン州で発見された牛に続く二頭目。初の米国産感染牛とみられます。
この結果は、米農務省が昨年十一月に「シロ」判定をしていたものが、日本や欧州で採用されている高精度検査、ウエスタンブロット法による再検査の結果、「クロ」と覆ったものです。
今回の感染確認を契機に、検査方法をはじめエサや個体識別などさまざまな面で、米政府が万全だと主張してきたBSE対策に米国内からも強い疑問が投げかけられています。日本での米産牛肉の輸入再開をめぐる議論にも影響が必至です。
感染が確認された牛は昨年十一月にへたり牛(ダウナー)として焼却処分されました。農務省は今後、簡易検査で結論が出ない場合、免疫組織化学的検査(IHC)とウエスタンブロット法の両方で検査すると発表。従来の検査の不十分さを裏書きした形です。
米国の消費者団体は政府の対応を強く批判しています。
ウエスタンブロット法の採用を以前から主張してきた米消費者連盟は、米国でのBSE検査は処理される牛の1%にすぎないことをあげて、月齢二十カ月を超える牛をすべて検査するよう求めています。
消費者運動のパブリック・シティズンは、牛の血液やトリ小屋から出る排せつ物などを牛のエサに混ぜたり、牛の肉骨粉を豚やトリのエサに利用するなどの「抜け穴」をただちに禁止すべきだと要求しています。
解説
世界に通用しない米式検査
出生地も月齢もわからず
これまで米農務省は、「米国産牛肉は安全」と主張して日本に輸入再開をせまってきました。今回、その前提がくつがえる結果になったばかりか、米国式の検査法そのものの信頼性も崩れ去りました。
米国は、日本や欧州がおこなっている高精度の検査法であるウエスタンブロット法の採用をずっと拒んできました。今回の再検査で、米国式の「シロ」判定は世界には通用しませんでした。
米政府は今回ようやく同検査法の採用を決定しました。しかし、検査の対象はいぜん、ごく一部の抜き取り検査です。しかも、米国には、日本や欧州のような牛の個体識別システムがありません。米政府は今回の感染牛が「八歳の高齢牛」であり、日本に輸出する「二十カ月齢以下」の牛肉は安全と主張しますが、そもそも月齢判定の科学的根拠さえない米国では、まったく説得力がありません。
今回の感染牛の出生地も、正確な月齢も、さらに同じ餌を食べて育った牛の所在もわからず、どこまでBSEが広がっているのかもわからないのが実態です。専門家はこれまでも米国の検査体制のずさんさを問題にしています。輸入再開にむけた諮問を政府から受けた内閣府食品安全委員会のプリオン専門調査会は二十一日、BSE感染がわかった牛の詳細な情報を米国に求める方針を確認しています。
「生後二十カ月齢以下」というあいまいな基準で、輸入再開への諮問をした日本政府の無責任ぶりが厳しく問われています。
(宇野龍彦)