2005年6月27日(月)「しんぶん赤旗」
日本に環境保護要求
石油開発で再抗議
ロシア・サハリン先住民
石油・ガスの開発により生活と環境が破壊されたとするロシア極東サハリンの先住民たちは、日本を含む国際企業体に対し補償などを求め、二十八日から抗議行動を再開すると宣言しました。モスクワと米ニューヨークでも連帯の行動が予定されており、先住民代表は開発の見直し、補償と環境保護のための行動への日本の市民の理解を求めています。(モスクワ=田川実 写真も)
ニブヒなどサハリンの少数先住民族は、これまでも開発による漁獲量減少や森林の乱伐採、水の汚染やトナカイ放牧への影響を指摘。
住民代表が入った独立機関による環境調査のやり直しと民族学的調査の実施、補償基金の創設を企業側に求めてきました。
■企業側と交渉実現
先住民は今年一月、環境団体などとともに開発が行われている現場で抗議行動を展開、その後、企業側との交渉が実現しました。抗議行動の再開は、この間の交渉で企業側から住民要求に具体的な回答がなかったことから決定されました。抗議行動は、北部ノグリキ近くの道路の封鎖など一週間続けられる予定です。
サハリン北部では、パイプラインで中国か日本に天然ガスを運ぶサハリン1鉱区、南部の工場で液化天然ガス(LNG)にして輸出するサハリン2鉱区などの事業が進行中です。サハリン1はエクソンモービル、ロシアのシブネフチ、日本政府が支援のサハリン石油ガス開発、サハリン2はロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事が、それぞれ企業体をつくり、海上掘削やパイプライン敷設を進めています。
■開発国際基準守れ
ニブヒの一人で北方先住少数民族協会(RAIPON)のサハリン支部長、アレクセイ・リマンゾー氏(32)は本紙に次のように語りました。
開発自体は必要だが、住民の権利、環境を守るという開発に関する国際基準が守られていない。被害は二つある。
一つは、ニシンなど漁獲量の減少、希少種のコククジラの生息地破壊など経済的なもの。私自身、モスクワで学んだ後、地元の漁業会社で働いたから事実はつかんでいる。もう一つは精神的被害だ。森をいきなり平原にしたり、小さな川をせき止め、道路を敷設し、パイプをひく。土地は一応国のものだが、長年のわれわれの生活場所で、先祖の墓だってある。先住民との合意抜きでやるのはおかしい。
私たちの活動は先住少数民族だけでなく、サハリンの多くの市民から支持されている。今回は外国でも抗議行動を行う。
石油ガス開発には日本企業も参加している。日本の人々が環境保護の国際基準を企業に守らせるために力を貸してほしいと心から願う。開発が行われているオホーツク海は私たち共通の財産だ。このままでは悲惨な地域になってしまう。
▼サハリン先住民 ニブヒ、ウィルタなど約三千百人、サハリン全人口の0・6%(〇二年)。伝統的に川でのサケ・マス漁や森林でのクマなどの狩猟、トナカイ放牧を営んでいましたが、ソ連時代の集団化で生活は変化しました。ロシアでは、国連のキャンペーンも受け、「先住少数民族の権利保障法」(一九九九年)などが制定されました。