2005年6月30日(木)「しんぶん赤旗」

G8行動計画案

温暖化対策 米が骨抜き

文書案から「責任」削除


 【ロンドン=西尾正哉】アフリカ貧困問題とともに、英国のブレア首相が来月の主要国首脳会議(G8サミット)で最重要課題とする地球温暖化問題が、米国のブッシュ政権の強硬な対応で合意が骨抜きにされようとしています。環境問題に取り組む非政府組織(NGO)は米国の態度を厳しく批判しています。

 ブレア首相は今月七日、G8サミットの事前会談のため米国を訪問。しかし、米国は従来の立場を崩しませんでした。ブッシュ大統領は同首相との記者会見で「(気候変動問題について)もっとよく知る必要がある。よく知れば問題解決がより容易になる」と述べ、“地球温暖化の科学的根拠が不明”とのブッシュ政権の従来の主張を繰り返しました。

 英メディアによると、ブレア首相の米訪問後、G8サミットの温暖化問題の文書は米国が合意できるように大幅に内容が薄められ、具体的行動を削除した実効力のない骨抜きのものになりました。

 英各紙の報道によると、以前の文書案は「われわれの世界は温暖化している」「問題は緊急だ」との認識に加え、「G8諸国は指導力を示す責任がある」「行動を延期することはできない」などの文言も含まれていました。しかし、訪米後にこれらの文言部分が空白になったといいます。

 地球温暖化問題に取り組むNGO「地球の友(FOE)」の運動担当のピアース氏は、「決議案は、気候変動問題への取り組みに何の進展もないことをあらわしている。最も豊かな国の指導者たちが、最も重大な脅威に合意できないのなら、彼らはどのような指導力を世界に示しているのか」と批判しました。

 英紙オブザーバー十九日付は、地球温暖化問題に臨む米国政府の方針文書を暴露しました。(1)気候変動問題が深刻な問題になっている(2)地球温暖化がすでに始まっている(3)人間の諸活動が気候変動の主要な原因―この三つが合意文書に含まれることに米国は反対するというものです。

 “米国との特別な関係”を自負する英政府内部からも米政府の姿勢に対し、不満の声が上がりました。ベケット環境相はインディペンデント紙十三日付のインタビューで、「共通の立場に立たないことに失望した」と米政権を批判しました。

 ブレア首相は、すでに米国の立場を変えることにさじを投げたようで、二十七日の記者会見では「アフリカ(の貧困問題)では一緒になって取り組むという感じがあるが、気候変動問題では困難だ」と明言しました。


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