2005年6月30日(木)「しんぶん赤旗」
イラク主権「移譲」1年
“勝利するまで駐留”
米大統領演説 中東干渉の拠点に
【ワシントン=山崎伸治】イラクへの主権「移譲」から一周年の二十八日、ブッシュ米大統領はノースカロライナ州フェイエットビルのフォートブラッグ陸軍基地で約八百人の米兵を前に演説しました。
約三十分の演説でブッシュ氏は、イラクに米軍を駐留させる目的が、テロリスト拘束と対テロ戦争の同盟国としてのイラク再建支援、さらに「拡大中東地域での自由の拡大」だと強調。「勝利するまでとどまり、たたかう」と述べ、イラクを中東各国に対する干渉の拠点にする意思を改めて鮮明にしました。
大統領は、特に新たな措置として、イラク治安部隊と多国籍軍の合同作戦を実施することを明らかにしました。
フォートブラッグはイラクにも部隊を送っている陸軍第八二空挺(くうてい)師団の駐屯基地。同基地を抱えるフェイエットビルは、三月十九日にイラク開戦二周年の全国規模の反対集会が開かれた町です。
ブッシュ氏は、今年一月の選挙の実施など政治的プロセスの進展や社会基盤の復興など「成功」の一方で、イラクの治安部隊の訓練が完了していないと指摘。米軍の撤退時期を示すことは「重大な誤り」だと批判し、「人為的な時間表を示すことは、イラクの人たちにも、米軍兵士にも、敵にも誤ったメッセージを送ることになる」と強調しました。
さらにイラクの「民主化」が中東地域の「民主化」に影響すると述べるとともに、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ事件に五回もふれるなど、テロとのたたかいを前面に強調。一方でイラク戦争の口実とした大量破壊兵器については一言もふれませんでした。
開戦以来の米兵の死者は千七百三十人を超え、米国内では撤退に向けた戦略の明示を求める声が強まっています。
この日に明らかになったCNNテレビなどの世論調査で、ブッシュ大統領の対イラク政策に満足していると答えた人は40%どまり、明確な政策を持っていないと答えた人も61%にのぼるなど、イラク問題をめぐりブッシュ政権に対する米国民の不信はひろがる一方です。
議会では与党・共和党議員からも「ホワイトハウスは現実から完全に切り離されている。現実とは、われわれはイラクで敗北しつつあるということだ」(ヘーゲル上院議員)といった批判があがっています。