2005年7月1日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「主権移譲」1年

イラクの苦しみが続いている


 ブッシュ米大統領がイラクへの「主権移譲」から一年にあたり、「イラクでの活動は困難、危険だ」と認めながら、米軍派兵継続を表明しました。

 一年前にイラク暫定政府に「主権」が移譲され、ことし一月に実施された暫定議会選挙の後に、難航のすえ移行政府が成立しました。しかし、一年前とほぼ同数の米軍約十四万人が駐留を続け、掃討作戦をくりかえす事態は変わりません。日本政府が「非戦闘地域」だとするサマワでも、自衛隊の車列に爆弾攻撃がおこなわれるなど、全土が戦争状態です。治安も生活困難も改善されず、イラク国民の苦しみが続いています。

■侵略戦争を継ぐ占領

 ブッシュ政権は、イラクのフセイン政権が大量破壊兵器を持っているとウソの口実をもうけて、一方的にイラク攻撃を開始しました。大量破壊兵器がないことがはっきりしても、戦争の手をゆるめません。国際的にも、イラク国内からも、強い抵抗にあってきたのは、それが大義のない侵略戦争だからです。

 米軍の占領支配に抵抗する動きの背景には、攻めこんできた米国に対するイラクの人々の強い反発があります。スンニ派住民は、ファルージャなどで住民皆殺し攻撃態勢をとる米軍の掃討作戦の主要な対象にされ、一月の選挙にほとんど参加できませんでした。暫定議会のほとんどの議員が、シーア派やクルドの住民です。そのなかでも三分の一の議員が、ジャファリ首相にたいし、外国軍の撤退日程を明らかにせよと要求しています。

 ブッシュ大統領は、「内外のテロリスト」が「イラクの内戦を扇動することに失敗した」と語りましたが、占領支配に反対しているイラク人がすべて「テロリスト」ではありません。しかも、イラクを戦場にして、外国の「テロリスト」にはいりこむ余地を与えたのは、当の米軍です。

 「内戦の危険」というなら、米軍とともにイラクの治安部隊が掃討作戦をおこなっていることが、イラク社会に亀裂をもたらしている現実を直視すべきです。ラムズフェルド米国防長官によると、治安部隊は「警察、国境警備、特殊、反テロ、陸軍の混成部隊」で、現在十六万人以上とされます。実態はほとんど、移行政府を主導するシーア派のイスラム主義政党やクルドの民兵組織が担っています。なかには、「スンニ派殺りく」を標ぼうする組織もあり、スンニ派の人々の反発をかっています。

 ジャファリ首相も、「主権移譲」一年を前に訪米してブッシュ大統領と会ったあと、米国に感謝を表明しつつも、「イラクに憎悪でなく愛を。ののしり合わずに共存と協力を」と語っています。

 イラクの主権は、イラク国民自身が担うものです。米軍が思いのままに銃を撃ち、イラク住民の一方に軍事的に肩入れして他方を攻撃する状態が続く限り、イラク国民の主権が確保された状態とはいえません。

■外国軍の撤退が不可欠

 スンニ派委員が増員されたと伝えられる憲法起草委の作業から本政府樹立に至る政治過程にも、主権回復は不可欠です。米軍と外国軍撤退の見通しをはっきりさせ、「内戦」の危険を避けなければなりません。「撤退期限は設けない」といい続けるブッシュ大統領にたいして、米議会では撤退への見通しを示せという決議案が提出されています。

 日本政府は、自衛隊をイラクから引き揚げ、憲法の平和原則に沿った復興支援をおこなうべきです。


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