2005年7月4日(月)「しんぶん赤旗」
「男が先」か「女が先」か
都教委 中学教科書の表現を調査
「意味がない」関係者あきれる
東京都教育委員会が中学校教科書採択の「指導・助言」用として六月下旬までに区市町村教委に送付した「教科書調査研究資料」で、「男が先」「女が先」の表現が教科書にそれぞれ何カ所あるかを集計し比較していたことが分かりました。調査の目的は「わが国の歴史や文化を尊重できるようにするため」(都教委)といいますが、男が先にこなければ「歴史や文化」を尊重していないのか―。関係者から「理解できない」と批判の声が上がっています。
資料は今夏の中学校教科書採択の「参考」として、各教委に送付されたもの。全教科のうち保健体育(三社)と家庭科(二社)の教科書について、男女にかかわる表現を探し出して一つずつチェック。「おとうさんやおかあさん」と書かれていれば「男を先述」、「卵巣や精巣」とあれば「女を先述」などと判定し、「男のみ」「女のみ」「男を先述」「女を先述」の四項目に分類。個所数を一覧表にしています。
本文だけでなく、イラストや表、写真まで細かくチェックしています。
調査は昨年から始まりました。きっかけは昨年四月の都教委で、ある委員が「教科書でも『男女』という記載をやめて、すべて『女男』と変えている教科書もあります。調査研究してもらいたい」とのべたこと。この委員は、“女が先”とする表現は「われわれが長い間使ってきた国語とだいぶん違うものがある」などと発言しています。
「このような調査はほとんど意味がない。税金はもっと意義ある作業に使うべき」とあきれるのは、ある家庭科教科書の執筆者。「男女平等の教育理念を攻撃する流れの中での調査だけに意図を感じる」といいます。
都教委は昨年八月、社会的、文化的につくられた性差(ジェンダー)にしばられないことを意味する「ジェンダーフリー」という言葉を使用禁止に。日本の侵略戦争を肯定する「新しい歴史教科書をつくる会」もこの言葉を攻撃しています。
元家庭科教師で家庭科教育研究者連盟の勝俣順子理事はいいます。「『男が先』『女が先』が何回登場したかを教科書採択の基準とすること自体が間違っています。このような資料を教科書の参考にするなど、とんでもないことです」
■都教委が「調査研究」した性別にかかわる表現の例
男のみ 父は町の主催するウオーキング大会にでかけました
女のみ 祖母は、近くの病院に治療に行きました
男を先述 夫の喫煙と妻の肺がん死亡率
発達の個人差や男女差
女を先述 母と姉はおいの乳幼児健康診査のために…
女子よりも男子のほうが…