2005年7月5日(火)「しんぶん赤旗」
全面的に請求退ける
学生無年金訴訟で不当判決
札幌地裁
二十歳以上の学生に国民年金への加入が義務付けられる以前に重度の障害を負い無年金障害者となった札幌市の田中士郎さん(52)ら四人が、国などを相手に不支給決定の取り消しと一人二千万円の損害賠償を求めた学生無年金障害者訴訟で、札幌地裁民事第一部の原啓一郎裁判長は四日午後、請求を全面的に退ける判決を言い渡しました。
田中さんは大学生だった一九七六年、難病の多発性硬化症を発症し、手足の運動が困難になりました。他の三人も、学生時代の事故や統合失調症の発症で障害者となりました。
判決は、二十歳以上の学生を強制加入から排除したことは立法府の裁量権の範囲内だとして、憲法一四条の「法の下の平等」に反しないとして請求を退けています。
国民年金制度は九一年の改正法施行まで二十歳以上になっても学生の加入は任意でした。未加入を理由に、障害基礎年金の支給を拒否されている学生無年金障害者は全国に四千人いるとみられ、全国で三十人が裁判に訴えています。東京、新潟、広島の各地裁が「法の下の平等に反する」など違憲と判決したのに対し、東京高裁、京都地裁は「国の裁量の範囲内」と原告敗訴の判決を出していました。
田中さんは「障害年金がわたしたちにとってどれほど必要なものか、全く考慮されていない極めて不当な判決。障害年金は老齢年金の付属物ではない。控訴してたたかい抜いていきたい」と怒りを新たにしていました。
弁護団長の佐藤太勝弁護士は「各地裁での到達点を丸っきり無視している。形式的で冷たい判決だ」と批判しました。
原告団は「二十年以上の長期にわたって、学生無年金障害者を放置してきた国の無為無策を追認した著しく不当な判決であり、到底受け容れることはできない」とする声明を発表。ただちに控訴する方針です。また五日には、原告と弁護団が厚生労働省に障害者無年金問題を根本的に解決することを求める要望書を提出することにしています。