2005年7月5日(火)「しんぶん赤旗」
アフガン戦闘激化
米軍駐留 疑問の声
9月選挙に影響懸念も
アフガニスタンでは九月の国会(下院)選挙と地方選挙を前に、反米武装勢力タリバンなどと米軍・アフガン軍の戦闘が激化しています。米軍のアフガン攻撃が始まって四年近く。なお続く戦闘で米軍駐留を問うアフガンの人々の声も報じられています。(ニューデリー=小玉純一)
カブールからの報道によると、米軍は二日、行方不明の偵察部隊の捜索の際に東部クナル州のタリバンの拠点を空爆しました。ワファ州知事は四日、この爆撃で女性や子どもを含む民間人十七人が死亡したと述べました。
この付近では六月二十八日、米軍の大型ヘリが墜落、十六人の遺体が確認されています。武装勢力の攻撃とみられるこの事件は、一度の攻撃での米兵の死者数としては二〇〇一年の戦争開始以来、最大です。
■車列が攻撃受け
またパクティカ州でも二日、国連職員の乗る車両を含む二十台の車列が爆弾攻撃を受け、アフガン兵ら六人が死亡。さらに南部ウルズガン州でも先週、銃撃戦で武装勢力と警察合わせて二十五人が死亡しました。
タリバンなどの攻撃やテロは春の到来とともに始まり、五月にはガズニ州で国会議員候補が殺されました。また同じ五月、南部の中心都市カンダハルでタリバンを批判した聖職者が殺害され、その聖職者を追悼していたモスクで六月一日、自爆テロが発生。警察署長ら住民十九人が亡くなりました。
■掃討作戦強める
他方、米軍は六月下旬に同国東南部で掃討作戦を展開。タリバンが潜むとにらんだ村々に武装ヘリで押し入り、三日間でタリバン兵ら百七十八人を殺しました。
三月以来、武装勢力の死者は五百人以上、米兵が四十八人、アフガン兵・警察が五十七人、市民百三十四人が死亡したと報じられています。
昨年十月の大統領選挙が比較的平穏だったため、タリバン封じ込めには楽観論もありました。それだけにタリバン再活性化の事態に、九月選挙への悪影響が各方面から懸念されています。
■テロの口実に
国連アフガン支援団(UNAMA)のジャン・アルノー責任者は六月二十四日、国連安保理への報告で、武装勢力の活動資金、活動場所、ネットワークに対する対策が必要だと強調しました。タリバンは主にパキスタンで新たなメンバーを勧誘、確保し、アフガンに送り込んでいるとされます。
五月、ブッシュ米大統領と訪米したカルザイ大統領は、米軍の「行動の自由」を盛り込んだ共同宣言を発表しました。タリバンはこれを「アフガンの国土をアメリカに売り渡した」と批判。「外国軍撤退までたたかう」として米軍の駐留をテロの口実にしています。
他方、武装勢力と米軍の戦闘長期化で、米軍駐留を問題とするアフガンの人々の声も報じられるようになりました。
■2万の米兵駐留
米ニューヨーク・タイムズ紙は、「米軍が人権を無視して村人や囚人を扱っている。これがタリバンに自由な活動を与えている」(アフガン人権委員会の役員)、「アメリカ人が情勢不安定の原因だ」(カブール大の学生)、「カブールの外では、三分の二の人たちがアメリカは侵略と占領のためにだけやってきたと考えている」(カブール大の助教授)といった見方を紹介しています(六月三十日付)。
米軍は二万人が駐留し、アフガン軍は二万六千人。国連安保理決議に基づく国連治安支援部隊は約八千人で、カブールなどを警備しています。