2005年7月6日(水)「しんぶん赤旗」
米軍攻撃、住民「甚大な苦難」
イラク赤新月社が訴え
【カイロ=小泉大介】イラク駐留米軍が「武装勢力掃討」を理由に同国西部を中心に続けている大規模軍事作戦について、イラク赤新月社(イスラム諸国の赤十字社に当たる組織)のフィルドス・アルアバディ報道担当者は四日、本紙に対し「軍事作戦でイラク住民は甚大な苦難を被っている」と指摘しました。
米軍は五月以降、イラク西部のシリア国境に近いカイム一帯で数千人規模の部隊を動員し大規模攻撃作戦を展開。現在は西部ヒート近郊でも同様の作戦を強化しています。現地からの報道では、爆撃で女性や子どもを含む多数の住民が犠牲となっています。
■女性や子ども多数住民犠牲
アルアバディ氏は、カイムでは攻撃で約七千もの世帯が避難し、現在も周辺の砂漠地帯での生活を余儀なくされていると指摘。避難民は気温四五度を超える猛暑のなか、水道も電気もない過酷な生活を続け、赤新月社がテントや水、医薬品などの物資援助を行っていますが、とても全員には行き渡っていないといいます。
カイム近郊のカラビラ村では、猛烈な爆撃で民家約百五十戸が全壊。多数の住民ががれきの下敷きになりました。生き残った住民も医薬品などの不足で保健状態は非常に深刻だといいます。攻撃の程度の差はあるものの、同様の作戦は西部ヒート、ラマディ、北部タルアファルなどでも行われています。
アルアバディ氏は、昨年四月と十一月に米軍による二度の総攻撃を受け、三千人近くの死者を出したとされる中部ファルージャの現状にも言及。「食料や医薬品の不足、学校の休校、他の街からの孤立などの状況は現在もかなりの程度で続いている」と語りました。
■援助物資搬入米軍が妨害
ファルージャでは米軍が家屋再建のための補償を約束しましたが、その実施は極めて不十分で、いまも約半数の家屋が破壊されたまま。住民の多くが避難先やテントなどでの生活を続けているといいます。
米軍は総攻撃後も長期間、赤新月社の援助物資搬入を阻止、妨害してきましたが、現在も同社の活動はさまざまな制約を受けています。アルアバディ氏によると、自動車で首都バグダッドから通常二時間足らずの距離にあるファルージャまで、現状では米軍の検問で早くても六時間、長ければ一日かかるといいます。