2005年7月8日(金)「しんぶん赤旗」
歴史・公民教科書めぐり緊迫
「つくる会」が請願
15県議会で採択
侵略戦争を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」などが、同会の歴史・公民教科書を採択させる目的で地方議会に請願や陳情を提出、日本共産党などが強く反対するという対決が全国に広がっています。四十七都道府県のうち今年に入ってから請願・陳情が採択されたのは、本紙の調べでは十五県議会。教科書採択を目前に各地で反対の声も広がっています。
■自・公・民賛成
「つくる会」を公然と支援している自民党がすべての県で賛成。公明党は少なくとも五県で賛成しています。区市議会では民主党も賛成したところがあります。
請願や陳情は「つくる会」の支部のほか、さまざまな団体・個人名で出されています。内容は(1)「不当な圧力」にき然と対処する(2)学習指導要領の「我が国の歴史に対する愛情を深め…」「歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を…尊重する態度を育てる」という目標に基づいて採択する―など「つくる会」の主張どおり。市民や教職員の意見を排除したり、「つくる会」に有利な基準で教科書を選ばせようとするものです。
今年に入ってから採択されたのは香川・千葉・神奈川・石川・滋賀・奈良・岡山・徳島・山形・宮城・熊本・和歌山・富山・栃木・鹿児島の各県議会。
自民党は今年の運動方針に「偏った歴史観やジェンダーフリーなどに偏重した教科書」の「適正化」を掲げ、こうした請願・陳情の採択を推進しています。国会議員が「つくる会」教科書採択のために「頑張りたい」と明言するなど、公然と教科書採択に介入。「植民地支配と侵略」への反省を表明した日本政府の立場に反する侵略正当化の教科書を、学校現場に持ちこませようとしています。
■反対運動広がる 埼玉・新座など陳情を不採択
日本共産党や「つくる会」教科書に反対する市民・教職員・保護者らが請願採択に反対する論戦・運動をしています。
「つくる会」の主張にそった二つの陳情が出された埼玉県新座市では日本共産党の笠原進議員が、陳情は事実上「つくる会」教科書の採択を狙ったものであることを指摘。「教科書は子どもの目からみてどれがいいのか、実際に教えている先生の意見も聞きながら選ぶことが大事」と主張しました。公明党や革新無所属議員なども採択に反対し、不採択となりました。
運動のなかで、自民党議員が採決時に退席する例も出ています。
宮城県では「つくる会」の宮城県支部が出した請願を採択しないよう「民主教育をすすめる宮城の会」と「子どもと教科書みやぎネット21」が議会要請を展開。委員会の採決では自民党議員の一人と公明党議員が退席、保守系議員の一人が反対に回りました。七日におこなわれた本会議で採択はされましたが、無効票が六票も出ました。
栃木県では六月議会でほとんどの市町村に「つくる会」関係団体から請願・陳情が出されましたが、「議会になじまない」などの理由で二十三市町村で議長預かりになり、一町では不採択。採択したのは二町にとどまっています。
教科書の採択は全国約五百八十の採択地区ごとに七月から八月にかけておこなわれます。