2005年7月13日(水)「しんぶん赤旗」
「つくる会」教科書
大田原市(栃木)が採用方針
“中止せよ”市民が抗議
栃木県大田原市の教科書採択協議会が、来年度から市立中学七校で使用する教科書について、侵略戦争を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」(扶桑社版)の歴史・公民教科書を採用する方針を固めました。「読売」が報じたもので、十二日の協議会で選定したとしています。十三日の教育委員会で正式に採択を決める予定。「つくる会」教科書は東京都立養護学校や私立校などで使われていますが、市町村立中学での採択は全国で初めてになります。
十二日の採択協議終了後、大田原市教育委員会の小沼隆教育長は本紙の取材に「明日(十三日)の教育委員会で報告する」とのべました。協議会会場の東地区公民館多目的ホールの窓はカーテンを閉め完全非公開。採択委員がトイレに出るさいも職員がつきそい、ものものしい雰囲気。
協議会の開催を知った栃木県北部歴史教科書と教育を考える会の西山洋子さん(61)は、採択しないよう要請し会場に駆けつけました。「ショックです。日本の戦争は正しかったとし、神話を子どもに押しつける教科書なんて六十年前の戦前に逆もどりしている」と声をふるわせました。
■ことの重大さ認識し慎重に
「『つくる会』教科書採択を阻止する東京ネットワーク」代表の山田朗・明治大学教授(史学)の話 「つくる会」教科書は、前回採択時とくらべて間違いが減り、体裁は整えている。しかし、侵略戦争正当化の基本的な論理は変わっていない。むしろ、「戦争は国家にとって当然の選択肢」というメッセージがよりクリアに伝わってくる内容だ。
この教科書を採択することは、従来の歴史教育の価値観を百八十度転換させることだ。市教委はことの重大さを認識し、慎重に決断するべきだ。