2005年7月20日(水)「しんぶん赤旗」
米国の牛肉輸入圧力は日本だけ?
〈問い〉 BSE問題で、米国の輸入圧力は日本だけなのですか? 他の国に対しても同じですか?(埼玉・一読者)
〈答え〉 米国の2003年の牛肉輸出実績(83万2835トン)を見ると、輸出量1位の国・地域は日本で、輸出シェアは35・5%です。
2位が韓国で24・8%、3位がメキシコで24・3%、4位がカナダで7・6%、後は台湾が1・9%、香港1・8%、クウェート0・5%、ロシア0・4%、バハマ0・4%、中国0・4%などです。
このうち米国におけるBSE発生後、米国からの牛肉輸入を禁止しのちに輸入を解禁した国・地域は、カナダとメキシコです。韓国は輸入をストップしたままです。また、台湾は、一度輸入を解禁したのち2頭目が米国で発生したのを受けて再度輸入を禁止しました。
カナダと米国は、肉牛生産では牛が相互流通するなど相互依存関係にあり、カナダの輸入再開では、大きな争点はありませんでした。
メキシコは、米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を締結している中で貿易の一体化を強め、輸入再開を決めています。
このような中で、米国政府は、輸出量第1位の日本に対して、執ように輸入圧力を強めてきました。日本は、2001年のBSE発生を受けて、これまでの食の安全にかかわるリスク管理とリスク評価を農林水産省が行ってきたやり方を改め、食の安全安心の確保を柱に据え、リスク評価は、食品安全委員会が行うという体制に変更しました。
食品安全委員会は、科学者による科学的な安全評価を行う独立した委員会で、外務省や農林水産省などの干渉を受けない建前になっています。その食品安全委員会のリスク評価の結論が出ない限り、米国産牛肉の輸入は再開できません。
そのような仕組みを理解していない米国政府や議会が、従来型の対日圧力をかけてきているのが、現在の状況と言えます。
背景には、日米軍事同盟下の日米関係で、対日圧力をかければ、日本は従ってくるというこれまでの歴史的経過があったと言えるでしょう。(智)
〔2005・7・20(水)〕