2005年7月24日(日)「しんぶん赤旗」
主張
アジアと日本
無反省「誇る」ことはできない
「21世紀に生きる日本の子供たちが、健やかに成長し、日本人としての誇りと自覚を失わず、世界中の人々と交わって活躍できるようになるために編さんされた歴史教科書」。こんな宣伝文句を並べたビラを作って、「新しい歴史教科書をつくる会」が自民党などと『新しい歴史教科書』(扶桑社)の採択運動を強めています。
しかし、「つくる会」の教科書そのものが国内外の厳しい批判の的となり、とりわけアジア各国と日本との関係を悪化させています。世界の人々との交わりを絶つ教科書を、二十一世紀に生きる子どもたちに渡すわけにはいきません。
■問われる歴史認識の根本
「つくる会」教科書の最大の特徴は、日本がかつて行った植民地支配と侵略戦争を、正当化していることです。朝鮮や台湾にたいする植民地支配を開発に寄与するものであったかのように描き、中国や東南アジア諸国への侵略戦争についても、当時の天皇制政府の言い分どおりの説明をしています。そして、「日本の将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った」などと、日本軍の“英雄物語”にしています。
「つくる会」教科書の「誇り」とはこういうものです。そこには、日本の侵略戦争によって死者だけでも二千万人を超す大変な犠牲を強いられたアジアの人々への思いはありません。
侵略戦争を正当化していては、また同じ過ちをくりかえすことになりかねません。
韓国や中国などアジア各国の人々が批判の声をあげるのは、当然のことです。大事なのは、それが、日本との平和、友好関係の発展を願う立場からのものだということです。
韓国の歴史学、労働、教育、芸術界の人々が日本の新聞(「読売」二十二日付)に出した意見広告は、「つくる会」教科書の採択を憂い、「和解と友情、平和な未来をひらくために、歴史を知ることが大切だ」と訴えています。
マレーシアの星州日報は、栃木県大田原市での「つくる会」教科書の採択が「日本と中国、韓国との関係をさらに冷え込ませる」と懸念を表しています。
韓国の金希宣(キム・ヒソン)国会政務委員長は「過去の真実を残さないと、未来が開かれない。過去の歴史を正して、日韓の友好的で親しい関係が築かれることを希望する」と語っています。
私たちは、日本の過去の誤りを明確にし、その誤りを二度とくりかえさないことをはっきりさせてこそ、平和な日本の進路に「誇り」をもって、アジアの人々と向き合うことができます。
日本国憲法は、侵略戦争を二度とくりかえさない反省と決意に立って、全世界の国民の「平和のうちに生存する権利」を確認しています。教育基本法は、憲法で確定した「世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意」を「教育の力」によって実現するとしています。
この憲法と教育基本法をふまえて進むことが、アジアの一員として、日本が世界の人々と平和に共存することを可能にします。
■ともに平和に生きる力を
日本の未来を担う子どもたちに必要なのは、歴史をゆがめず、真実を直視して、アジアの声にしっかり耳を傾け、ともに生きる力を身につけられる教科書です。アジアと世界で平和に生きていくことの大切さを学べる教科書を選ぶことは、日本国民が未来への責任を果たす仕事です。