2005年7月26日(火)「しんぶん赤旗」
郵政民営化法案
大門議員質問から
「設計図」は勧告通り
米国の要求で「修正」
米国の要求に基づいた郵政民営化法案――。二十五日の参院特別委員会で質問にたった日本共産党の大門実紀史議員は、米国通商代表部(USTR)の報告書と日本政府の「回答書」をつきつけ、米国が日本の郵政民営化で圧力をかけ、日本政府がこれに屈従した事実を明らかにしました。
■基本方針発表直前に
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通商・貿易部門を一括して担当し、これまでにもさまざまな圧力を日本にかけてきた米通商代表部。大門氏が提示した資料は、二〇〇五年三月一日付の「USTR通商交渉・政策年次報告書」です。
日米交渉を通じて米国が勧告し、その後、日本政府は修正のうえで郵政民営化の基本方針を発表したことを堂々と記述しています。
二〇〇四年八月、日米保険協定に基づく二国間協議が東京で開催され、米国側が「簡保と民間事業者の間に存在する不平等な競争条件」が解消されるまでは「簡保が新商品提示を停止するよう」日本政府に要求したといいます。
「その後、内閣の設計図には米国が勧告していた次のような修正点が含まれた」として、次の四点をあげています。
(1)日本郵政公社に民間事業者と同じ納税義務を負わせる(2)日本郵政公社の保険商品に関する政府保証を打ち切る(3)日本における保険のセーフティーネットのシステムに日本郵政公社の全面的な参加を要件とする(4)日本郵政公社の保険事業が民間事業者に適用されるのと同じ法的義務や規制上の義務の下に置くことを要件とする――。
この日米二国間協議は、日本政府が郵政民営化の基本方針を出す一カ月前。報告書自身、「協議は、内閣が法案起草の指針にする設計図を発表し承認する直前に開催された」とのべています。
日本政府の基本方針発表直前に米国が要求し、その意見をとり入れて、もともとの日本の案は書き換えられたという事実があからさまになったのです。
■日本側の卑屈な態度
日本政府側はどうか。大門氏は、外務省北米二課による「日米経済関係・個別案件総覧」を提示。今年四月に米国に提出した日本政府による「回答書」です。
それによると米国側の「関心」として、(1)簡保と民間との競争条件平準化(2)競争条件平準化が実現するまで簡保新商品を発売しない(3)簡保に係る意思決定や郵政民営化の過程での透明性確保――を列挙。
日本側の回答として、(1)新商品導入の計画は現在有していないことを改めて確認する、変更する場合には速やかに米側に説明をおこなう(2)民営化の議論の過程では米国を含む外資系企業の意見を聴取していく(3)米国に対して必要な説明をおこなっていく――ことを「表明してきている」とし、米の要求の一つ一つに具体的に応えていることを強調しています。
大門氏は、「極めて卑屈な回答だ。自分たちの考えでやってきたとはいえない」と追及。竹中担当相は、「しっかりと対話をしている。それが外交の基本だ」と答弁しました。
■日米会合は18回に
政府の郵政民営化準備室が昨年四月以降、米国の政府や民間関係者との協議をくり返してきた問題でも新事実が判明しました。
この協議の相手は保険関係者五回、物流関係者二回、在日米国大使館経済関係者との全般協議が十一回。これまで、「相手のあることなのでいえない」と詳細を明らかにすることを拒んでいた政府が初めて認めました。
十八回のうち、五回までが保険関係独自の会談です。会談に加わったとされる米国生命保険協会(ACLI)は、今年三月に、国際条約や二国間条約の下での、簡保の「是正措置」を露骨に要求した団体です。
大門議員は、「簡保は加入世帯二千九百万、世帯加入率六割を超える国民の命の公的セーフティーネット。それを他国の政府と業界がターゲットにしている。こんなことを許していいのか」と質問。竹中担当相は「(民営化は)簡保への敵対的買収にたいする防衛策だ」と支離滅裂な答弁をしました。
サービス低下で国民にとっては「百害あって一利なし」の郵政民営化。その最大のねらいが米国の圧力のもと、郵貯・簡保の国民の財産三百四十兆円を日米の金融、保険業界に差し出すものであることが明らかになりました。
■狙いは郵貯・簡保資金の「開放」
政府・与党は、郵政民営化について、郵便局が行う金融の二事業(郵便貯金、簡易保険)に集まる三百四十兆円の資金を「民間に開放する」ことだと説明しています。
小泉内閣が郵政民営化につきすすむ背景には、日本の銀行・保険業界とともに、米国政府やアメリカの金融・生命保険業界が、郵貯・簡保資金の「開放」を強く要求してきたことがあります。
米政府が毎年十月に日本政府に対して示している「年次改革要望書」は、九〇年代初頭から、保険分野の「規制緩和」として簡易保険の「改革」を一貫して要求、二〇〇〇年代にはいってからは郵政民営化そのものを強く求めています。
米政府の要求は、日本の金融分野に外資が参入するための障壁をなくし、米生命保険会社のビジネスチャンスを拡大することをねらうもので、国民の財産である郵貯・簡保を米国資本に明け渡すことを求めるものです。