2005年7月27日(水)「しんぶん赤旗」

現憲法の“手本”となった民間の「憲法草案要綱」とは?


 〈問い〉 改憲派が「押しつけ憲法の克服」を改憲理由に掲げるなかで、現憲法の“手本”になった日本の民間の憲法案が存在するという金子勝氏の一文(6月22日付文化面)を興味深く読みました。「憲法研究会」と「憲法草案要綱」についてくわしく知りたいのですが。(東京・一読者)

 〈答え〉 「憲法研究会」は、終戦直後の1945年10月末に高野岩三郎(元東大教授・後に初代NHK会長)が鈴木安蔵(憲法学者・後に静岡大学教授)に提起し、11月5日、杉森孝次郎(元早大教授)、森戸辰男(元東大助教授・後に片山・芦田内閣の文部大臣)、室伏高信(評論家・元朝日新聞記者)、岩淵達雄(政治評論家・元読売新聞政治記者)らが集まり発足させた民間の憲法制定研究団体です。

 同研究会が同年12月26日、発表した「憲法草案要綱」には、「日本国の統治権は、日本国民より発する」「天皇は、国民の委任により専ら国家的儀礼を司る」「国民の言論・学術・芸術・宗教の自由を妨げる如何なる法令をも発布することはできない」「国民は、健康にして文化的水準の生活を営む権利を有する」「男女は、公的並びに私的に完全に平等の権利を享有する」など、現行憲法と少なくない部分で通ずるものがあり、軍に関する規定も設けていませんでした。

 当時、日本政府は明治憲法を表現を変えるだけで引き継ごうとしていたなかで、GHQが最も注目したのが憲法研究会案でした。

 この案が新聞に発表された3日後の12月31日には参謀二部(G2)所属の翻訳通訳部の手で早くも翻訳がつくられ、翌年1月11日付でラウエル中佐が詳細な「所見」を起草、これにホイットニー民政局長も署名しています。「所見」は各条文を分析したあと、「この憲法草案中に盛られている諸条項は、民主主義的で、賛成できるものである」と高く評価し、加えるべき条項として憲法の最高法規性、人身の自由規定、なかでも被告人の人権保障などをあげていました。

 こうした憲法研究会の役割については、『憲法制定前後』(鈴木安蔵著、青木書店)、『新憲法の誕生』(古関彰一著、中公叢書)などに詳述されていますが、古関氏はこの中で「憲法研究会案とは、自由民権期の憲法思想が、半世紀にわたる弾圧と苦闘のあとでこの二人(高野、鈴木)の歴史の継承者を通じて復権を果たしたことを意味する」と書いています。(喜)

 〔2005・7・27(水)〕


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