2005年7月29日(金)「しんぶん赤旗」

「つくる会」教科書

都教委が採択強行

“都民不在”に批判

中高一貫校と障害児学校の一部


写真

(写真)「つくる会」教科書の教育委員会採択に反対する都教職員組合などの宣伝=28日、東京・都庁前

■何の議論もせず

 東京都教育委員会は二十八日、日本の侵略戦争を肯定する「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校用歴史教科書を都立中高一貫校四校で採択することを強行しました。また、知的障害と盲学校を除く障害児学校の中学部に「つくる会」の歴史・公民教科書を採択しました。

 採択は都立中高一貫校は学校ごと、障害児学校は障害の種別ごとに、教育委員六人(木村孟委員長、鳥海巌、米長邦雄、内館牧子、高坂節三各委員、中村正彦教育長)の無記名投票で行われました。他の主要教科は教育委員の意見が割れ、多数決となるなか、歴史、公民は「つくる会」教科書がすべての学校も全員一致で採択されました。都立中高一貫校各校の特色や障害の種類に応じた論議もありませんでした。

 中高一貫校の公民は該当学年(三年生)がまだいないため、今回は採択は行われませんでした。

 都教委の採択強行に対し、国内外から強い批判があがっています。

 「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワークは二十八日、「採択を撤回し、手続きをやり直す」ことを求める抗議声明を発表。

 同会の三浦久美子事務局長は記者会見で「子どもたちの一度しかない中学時代の教科書を、ろくに審議もせずに採択したことは許されない。都教委が旗を降ろすまで私たちはたたかい続ける」とのべました。

■417件の請願無視 公平性に疑問(解説)

 「出来レース」という言葉が、「つくる会」教科書の採択を決めた都教委の模様を見守っていた都民から異口同音に語られました。それほど都教委の「つくる会」への加担は目にあまり、採択の公平性が疑われています。

 この間、横山洋吉教育長(当時)=現副知事=が五月に宮崎県、熊本県で自民党県連が主催した「つくる会」教科書を推進するシンポジウムにパネリストとして出席。区市町村教育委員会への「指導・助言」のために都教委が作成した教科書調査研究資料は、「日本の神話や伝承」(歴史教科書)「我が国の領域」(公民)など「つくる会」の宣伝と同じ項目が並び、明らかに「つくる会」教科書の採択に有利になるよう作られました。

 例年八月に行ってきた採択を、今回七月二十八日に強行したことに対しては、各地で不採択が続く「つくる会」教科書の採択を進めるための政治的決定ではないかとの批判の声もあがっています。

 本来、教科書の採択は、実際に教科書を使う教員をはじめ、都民の声を尊重して行われるべきです。ところが、「つくる会」教科書を採択しないよう求める四百十七件の請願を無視して都教委は採択を強行しました。都民、教員の声を無視し、ゆがめた日本の歴史を教えて子どもたちの将来を誤らせるなど許されません。

 都教委は「日の丸・君が代」強制や性教育への攻撃など、教育に対する強権的な介入、統制を進めてきました。

 都教委の六人の委員を任命したのは、自らも「つくる会」の賛同人の石原慎太郎都知事です。世界で通用しない特異な歴史観を教育の場に持ちこむ石原知事の責任はいうまでもありません。同時に、都議会で強権的な教育行政の旗振り役を務め、「つくる会」教科書の採択を後押ししてきた自民、民主各党の責任も厳しく問われます。(室伏敦記者)


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