2005年7月29日(金)「しんぶん赤旗」

「茶番だ」市民ら抗議

都教委の「つくる会」教科書採択


 「理由も言わずに『つくる会』教科書を選んだ」「茶番だ」。「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校社会科教科書(扶桑社)が都立中高一貫校とろう・養護学校で採択された二十八日、東京都教育委員会を傍聴した市民から怒りの声が飛び出しました。市民団体などでつくる「『つくる会』教科書採択を阻止する東京ネットワーク」は採択撤回を求める抗議声明を出しました。

 この日午前十時に始まった教育委員会は「全委員が一致して推薦したものは協議しない」との方針で進められました。その結果「つくる会」教科書については何の議論もも意見もなく、採択を決めました。

 都庁前には八時前から市民や教職員、法曹関係者ら約二百人が集まり、宣伝カーやビラ三千枚で不採択を訴えました。

 十一時すぎ、傍聴に入ったメンバーが「全委員一致で採択」を知らせると、ロビーで待機していた一団からどよめきが起きました。傍聴した武蔵村山市の女性団体職員、油原通江さん(42)は「無言のまま採択を決めた。出来レースという印象です」と憤りました。

 宣伝カーに戻って開いた集会で、東京都教職員組合の中山和人書記長が委員会の様子を報告しました。

 吉田典裕・出版労連教科書対策部事務局長は「一切の議論抜きで採択したのは、政治的に扶桑社版を採択する必要があったからだ」と指摘。各地域で採択を阻止し「東京都を孤立させ、『つくる会』運動を霧散させよう」と語りました。

 自由法曹団東京支部の田中隆弁護士は▽都教委の採択のひどさを全国に伝える▽八月末まで都教委に採択撤回を求めつづける▽都内各地域で今後一冊も採択させない―の三点を呼びかけました。

 午後、東京ネットが都庁内で記者会見し、発表した抗議声明は「都教委は…歴史の事実をゆがめる教科書を採択した自治体として国際的に恥辱を味わうことになろう」と述べ、採択撤回と採択手続きのやり直しを求めています。


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