2005年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

主張

郵政民営化法案

民間は公社に代わりえない


 郵政民営化法案を審議している参院特別委が開いた地方公聴会、参考人質疑で、民営化への批判や不安が噴き出ています。

 二十九日の参考人質疑では―。

 「山村では郵便局は公共サービスの最後のとりで。市場原理に任せたら次々消えていく」(長野・泰阜(やすおか)村の松島貞治村長)。郵政民営化は「百害あって一利なし」(元大蔵省財務官の榊原英資慶大教授)。

■郵便局網の危機

 二十八日に京都、盛岡両市で開いた地方公聴会では―。

 農協の合併で「唯一郵便局だけが地域の金融機関のところもある。民営化で不採算の局が撤退し、過疎地に悲惨な結果が予想される」(京都府農業共済組合連合会の草木慶治会長)。「民間になれば必ず利益追求のしわ寄せが来る」(民営化を支持する藤原誠市・盛岡商工連盟会長)

 参院の審議入りで小泉首相は「大方の理解を得るように丁寧に誠意を持って対応していきたい」とのべました。しかし、参院でますます鮮明になったのは、民営化が国民サービスを大きく後退させる危険です。

 自民党執行部は、衆院での修正によって、郵便局網が維持できなくなるという不安が払拭(ふっしょく)されたかのように言っています。ところが小泉首相は、参院特別委の答弁で「骨格、基本方針、中身は変わっていない」と繰り返しています。「修正」はごまかしにすぎないことを、自民党総裁の首相みずから表明しています。

 竹中郵政民営化担当相は法案の中心点を次のように説明してきました。国の関与を断ち切るために、貯金・保険は全国共通サービス(ユニバーサルサービス)の義務付けをやめ、持ち株会社が保有する貯金・保険株を100%処分する。

 その上で赤字の一部を補う地域貢献基金・交付金を創設し、経営者の判断で移行期終了後も株式の持ち合いを認める。これによって、実態としてサービスを確保できる。

 こんな措置を取ること自体、民営化で全国共通サービスが存立の危機にさらされることを示しています。

 全国共通サービス義務付けをやめるというのは、具体的には「あまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする」と定めた郵貯法第一条の廃止です。

 民営化で国民向けのサービスがどうなるのかを見るとき、ここが決定的に重要です。郵貯は全国一律サービスを提供する義務がなくなり、生活安定や福祉を目的とした公共サービスでもなくなる。民間の銀行と同じになるということですから、もうからない事業はやりません。

■看板に根本的誤り

 「民間は公社に代わりえない」「郵貯・簡保に(全国共通サービス提供が)単なる努力目標とされた場合、経営者の立場としては最終的に資本の論理と誘惑には勝てない。郵貯・簡保を中心に郵便局ネットワークにほころびが出れば、結果としてネットはぼろぼろになってしまう」

 経済財政諮問会議でこう警告したのは、商船三井の社長・会長を歴任し、小泉首相の指名で郵政公社に乗り込んだ生田正治総裁その人です。

 「資本の論理」に従えば、赤字や収支トントンではリストラの対象です。わずかな交付金で取り繕うことはできません。株式持ち合いに至っては何のあてにもなりません。

 民間にできない公共サービスを担っているのが郵政です。「民間にできることは民間に」という看板そのものが根本から間違っています。


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