2005年8月2日(火)「しんぶん赤旗」

金融サービス利用は基本的人権

排除広げる郵政民営化

参院郵政特 大門議員の質問


 いまの日本では、給与や年金を受け取るにも、送金やさまざまな支払いのためにも、金融機関に口座を持つことが、生活していくうえで不可欠です。

 ところが、欧米諸国では、金融機関の収益至上主義経営を主な理由として、低所得者や少額預金者、いわゆる金融弱者が、口座開設を銀行に拒否されたり、高い口座維持手数料のために口座を開設できないという問題=「金融排除」が広がり、大きな社会問題となっています。

 日本共産党の大門実紀史議員が一日の参院郵政民営化特別委員会でおこなった質問で、あまねく国民に金融サービスを提供してきた郵便局のサービスを壊す郵政民営化は、金融弱者保護という世界のすう勢から見て、大きな逆行になることが明確になりました。

 昨年十月、世界貯蓄銀行機構と世界銀行が共同開催した年次総会での「金融アクセス問題解決」決議は、「金融サービスへのアクセスは基本的な人権である」と宣言し金融排除をなくす新たな目標をかかげました。

■口座に手数料

 同総会で冒頭講演したホルガー・ベルント総裁は、「欧州諸国の金融サービスは、身近な金融機関、なかでも過疎地域にも、低所得者の人びとにも差別のないサービスを提供している郵便局の金融サービスが継続的に維持されることによってのみ、保証されているのが現状である」とのべています。

 竹中平蔵郵政民営化担当相は、金融排除の世界的な広がりの背景に、「九〇年代以降のフロンティア(開拓地)の開かれる厳しい時代がある」と認めました。そして、その波は、日本の大銀行の収益至上主義経営の下で、小口預金者の大規模な切り捨てと店舗閉鎖の大波となって現れています。

 金融排除も確実に進行しています。採算優先で利用者の利便は犠牲にされ、郵便局では取られない口座維持手数料(別表参照)にみられるように、各行とももうけがあがる大口預金者は優遇しても、小口預金者はじゃまもの扱いというのが実態。その結果、民間銀行の三百万円未満の小口預金口数(下表参照)は、大幅な減少に向かっています。

 庶民の金融サービスの最後のとりでとなる郵便貯金を明け渡そうとする民営化があまりにも無謀なものであることは誰にも否定できません。

表

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■政府研究会も

 金融排除の広がりは、実は政府の研究会も早くから見越していたものです。

 二〇〇〇年六月の「郵便貯金の事業経営に関する将来ビジョン研究会最終報告」は、「(九八年からの金融ビッグバンの進展は、相対的にリスク許容度が低く情報・交渉力劣位にある小口個人の預金者に対して、不利益をもたらす可能性…がある」と金融排除の可能性を指摘したうえで、「郵便貯金がこれまで果たしてきた小口個人の利益確保という役割が今後ますます重要なものになる」とのべています。

 ことは国民の基本的人権にかかわる問題です。これほど大きな欠陥を抱えた郵政民営化はただちにやめ、同法案は廃案にすべきです。


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