2005年8月6日(土)「しんぶん赤旗」
コメのヒ素濃度
米国産に高い値
『ネイチャー』
米国産のコメは、欧州産やインド産などのコメよりヒ素の濃度が高い―。英国の研究者がおこなった研究の結果を、科学誌『ネイチャー』が電子版で紹介しています。
英・アバディーン大学の研究グループは、アバディーン市内で米国産と欧州産、インド産、バングラデシュ産のコメを購入し、それぞれのコメに含まれているヒ素の濃度を調べました。
その結果、米国産のコメが一グラム当たり平均〇・二六マイクログラム(一マイクログラムは百万分の一グラム)のヒ素を含んでいるのにたいし、インド産が同〇・〇五マイクログラム、欧州産とバングラデシュ産が同〇・一五マイクログラムと、米国産のコメが調べた中で最もヒ素の濃度が高いことがわかりました。
バングラデシュでは地下水中のヒ素濃度が高いことから、コメのヒ素濃度が高い値を示すことが予想されていましたが、米国産はそれよりも高い値でした。研究グループは、米国の主要なコメの生産地であるアーカンソー州やミシシッピ州ではかつて綿花の栽培がさかんにおこなわれ、綿花につく害虫を駆除するためヒ素を含む農薬が散布されたことがかかわっているのではないかとみています。
■解説
■1日5百グラム摂取でWHO基準超にも
ヒ素の毒性は、無機物か有機物かなど、ヒ素を含む化合物によって異なります。一般に有機化合物より無機化合物の方が毒性が強いとされています。
米国産のコメに含まれていたヒ素の42%は無機化合物でしたが、インド産のコメに比べると半分ぐらいの比率でした。しかし、研究グループによると、有機化合物のヒ素を摂取した場合でも体内で無機化合物に変わる可能性があるといいます。
少量のヒ素を摂取しても急性の病気を引き起こすことはないとしていますが、研究グループは台湾でヒ素に汚染されたコメを食べることで膀胱(ぼうこう)がんが増えたとする例が報告されたことをあげています。
世界保健機関(WHO)が設けた暫定的耐容週間摂取量にもとづいて計算すると、無機化合物のヒ素の摂取基準は体重五〇キログラムの人の場合、一日当たり百七マイクログラムとなります。研究グループは、米国産のコメを一日に五百グラム食べると、WHOの基準を超えることになるかもしれないとしています。日本では現在、ヒ素が含まれているコメの流通などを規制する基準は設けられていません。
(間宮利夫)