2005年8月10日(水)「しんぶん赤旗」
サイバー犯罪取り締まり法案どう考える?
〈問い〉 サイバー犯罪取り締まり法案は、犯罪と関係のないものまで広げられて通信の秘密を侵される可能性があるのではないでしょうか?(大阪・一読者)
〈答え〉 コンピューター・ネットワークが世界中に広がり、日常生活に欠かせないものとなっているなかで、電子ウイルスを送りつけるサイバー犯罪の対策が必要なことは当然です。しかし、そのことで国民のプライバシーや通信の秘密を侵害することは絶対に認められません。
サイバー犯罪を取り締まることを目的とした改正案は、共謀罪の新設などを含む「犯罪の国際化・組織化・情報処理の高度化に対処するための刑法等一部改正案」に盛り込まれました。法案は、国会解散で廃案になりましたが、捜査機関がプロバイダー(通信事業者)などに対して、業務上記録している電子メールの通信履歴(送信元、送信先、通信日時など)について、90日を超えない期間、消去せずに保全することを、令状なしに要請できる制度で、裁判所が出す令状を必要としないため、司法的チェックを受けないものとなります。
現在、通信履歴の保全は、裁判所で令状を取って行われており、今後も令状をとってから保全するべきです。捜査機関だけの判断で、令状なしに保全要請ができることになれば、捜査機関による乱用の恐れがあります。
また法案は、他人のパソコンを不正常にさせる目的を持って電子ウイルスを作成、提供、取得、保管した者について、当該ウイルスを使用する意図なく単純に所持しているだけでも罰則の対象としています。単純所持罪は、犯罪に使用することを目的としなくても処罰の対象としているため、電子ウイルスに対するワクチンの開発など正当な研究・開発行為まで、乱用されてしまう危険があります。単純に所持していることを処罰するため、盗聴などの捜査手法が拡大されていく危険もあります。(崇)
〔2005・8・10(水)〕