2005年8月13日(土)「しんぶん赤旗」

侵略肯定に区民の抗議

「つくる会」歴史教科書

杉並(東京)で採択


 東京・杉並区教育委員会(五人)は十二日の臨時会で、来年度から区立中学校で使う歴史教科書に、侵略戦争を肯定する「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する扶桑社版を、区民の強い批判を押しきって採択しました。

 同区は、自民、公明、民主の各党が与党となっている山田宏区長が「つくる会」教科書を支持しなかった教育長を更迭するなどしてきました。

 同区教委は四日の委員会で全教科の教科書採択を行う予定でしたが結論が出ず、継続審議となっていました。

 大蔵雄之助委員が「一番学習指導要領に近い記述が並んでいる」と「つくる会」教科書を支持。宮坂公夫委員も「他の教科書は日本の過去を戦争ばかりで他国に害を及ぼしたとある。比べると扶桑社だ」とのべました。

 安本ゆみ委員は「『日本の将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った』と書くなら、戦争の悲惨な実態や被爆国としての経験も書くべきだ」と「つくる会」教科書を批判。

 丸田頼一委員長も「扶桑社は全般的に説明調で、いかにして教え込むかという流れが鮮明だ。いまは思考力重視の教科書が求められる」と「つくる会」教科書の問題点を指摘しました。

 しかし能冨善朗区教育長が「日本人がどういう歴史を経て、どの方向に向かっていくのかを一貫して提示しているのが扶桑社だ」と発言。

 丸田委員長は「教育長の最後の発言で、従来の決め方に従えばそう(『つくる会』教科書に)なる」とのべ、採択となりました。

 終了後、「子どもを政治の犠牲にするのか」などと抗議の声が傍聴者から次々あがり、委員会室は騒然となりました。

 杉並区では二十三の区立中学校で三学年合計六千三百二十五人の生徒が在学(四月七日現在)。区市町村で「つくる会」教科書を採択したのは栃木県大田原市に次いで二地区目。また東京都教育委員会が都立障害児学校と中高一貫校に「つくる会」教科書を採択し、強い批判を浴びています。

■各団体が抗議の声明

 東京都杉並区教育委員会が十二日、「つくる会」歴史教科書を採択したことに対して、各団体や教職員組合などが抗議し、白紙撤回・やり直しを要求する声明を相次いで発表しました。

 子どもと教科書全国ネット21と「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワークは、「つくる会」歴史教科書は「戦争に向かう」=「戦争をする国」の国民を育てる教科書であり、「中学生に使わせるのはふさわしくない」ときびしく批判。自由法曹団と同東京支部は、子どもたちの成長を考えるべき教育委員の責任を放棄し、「アジア諸国との友好を阻害する暴挙」とのべています。

 在日本大韓民国民団東京地方本部は、侵略戦争と植民地支配を正当化する「つくる会」教科書の採択が「アジアの民衆との心の決別を選択したことになる」と指摘。

 東京都教職員組合は、「つくる会」教科書を子どもたちに手渡さないため「すべての人びとと力を合わせて奮闘する」と表明。「杉並の教育を考えるみんなの会」は「子どもたちを戦争へ導く教育を断固拒否します」とのべています。


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