2005年8月14日(日)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化
たとえるなら、これぞ天動説
小泉首相は総選挙で郵政民営化の是非を国民に問うとのべています。
民営化法案は郵貯・簡保を銀行や生保と同じ利益優先の経営に変質させます。郵貯が、リストラで店舗を次々閉鎖して手数料ばかり取る大銀行のように、庶民を“お荷物”扱いする金融機関になっては困ります。
■「そもそも」から破たん
これまでの論戦で、民営化の是非には、はっきり「非」と決着が付いています。そもそもなぜ民営化が必要なのかという根本から、すべて破たんしています。
小泉首相は郵政民営化の理由として、少し前まで、次のように主張してきました。「役所に任せておくと、どんどん民業を圧迫し肥大化する」「これは特殊法人に全部つながってくる」、だから民営化だ。
特殊法人問題では、郵貯・簡保の資金が自動的に特殊法人に流れる仕組みは、すでに四年前になくなっています。日本共産党は早くからこの点を取り上げ、不要不急の大型公共事業など特殊法人のムダ遣い、政官業の癒着・談合を断つことこそ必要だと主張してきました。
郵政から特殊法人に資金を流す仕組みが廃されたことは、その後、麻生総務相、経済財政諮問会議の本間正明阪大教授、金融の専門家で政府の審議会委員を務める池尾和人慶大教授らも指摘するに至っています。
このため首相は、郵政民営化のアピールを最大の眼目にした解散直後の記者会見でも、特殊法人問題を持ち出すことはできませんでした。
もう一つの「肥大化論」は政府・与党みずからひっくり返しました。民営化法案とりまとめの過程で、「国営のままだとジリ貧になる」と正反対の主張に一転したのです。
ここには、郵政民営化の道理のなさがくっきりと表れています。
昨年半ばの政府の地方懇談会で、どの会場でも「なぜ民営化なのか」と疑問が噴出し、「そもそも論」を経済財政諮問会議で徹底議論することに。ところが「民間は公社に代わりえない」など反論が続出します。
最後は小泉首相が「そもそも論は気にする必要はない」「もうやめよう」とさじを投げ、議論を打ち切ってしまいました。
こういう流れの中で、政府・与党は「公社ジリ貧論」にすがりつきました。しかし、これも誤りです。
実際は、逆に民営化で「ジリ貧」になることを証明したのが日本共産党の国会論戦です。佐々木憲昭衆院議員は、厳しい金融環境の下で、郵貯が公社のままなら十年後に千四百億円の黒字を確保できるのに、民営化した場合は六百億円もの赤字に転落することを政府試算をもとに明らかにし、竹中大臣も認めざるを得ませんでした。
「公社ジリ貧論」の賞味期限は、あっという間に切れました。
■ガリレオが泣いている
小泉首相が民営化論の最後のとりでとして最近強調しているのは「公務員の削減」です。ところが、郵政は独立採算制で、職員の給料を含めて税金は一円も使われていません。まさに「ためにする議論」です。
首相は、否決されても郵政民営化を主張する自分を、弾圧されても「それでも地球は動く」と言ったとされるガリレオになぞらえました。
これでは科学者・ガリレオが泣きます。根拠をことごとく覆されても、とにかく「民営化ありき」の小泉首相は、頑迷な宗教観で「天動説」に固執し、ガリレオを弾圧した当時の為政者の方にそっくりです。
「百害あって一利なし」の法案にとどめの審判を下しましょう。