2005年8月15日(月)「しんぶん赤旗」
米国の牛肉検査は穴だらけ
安全確保へ独立機関つくれ
米紙がBSE対策批判
【ワシントン=山崎伸治】米紙ニューヨーク・タイムズは十三日付の社説で、牛海綿状脳症(BSE)問題について、米農務省が消費者の安全よりも食肉産業の利益を守る側に立っていると批判し、「農務省から独立して食品の安全を確保する機関をつくるべきだ」と主張しました。
米国では七月末にBSEの疑いのある牛が見つかり、「陰性」と判定されました。「しかし米国産牛肉に安心する理由はない」と社説は指摘。その理由として、米農務省が「米国産牛肉が完全に安全だと確実にいえるだけの検査の実施を求めていない」ことを指摘しています。
BSEの原因は草食動物である牛に肉骨粉を与えることにあり、米食品医薬品局(FDA)もそれは禁じています。ところが「FDAの査察体制は不十分で抜け穴だらけ」、しかも牛の血液を与えることは認められているほか、牛の肉や骨を原料としたニワトリ用飼料を牛に与えることも行われています。
社説は、農務省が危険部位除去のルールを強化しても、英国や日本と違って個体識別制度を義務付けていないため、三十カ月を超えた牛の危険部位が食肉に混入する可能性を指摘。米国では食肉処理される牛の1%未満しかBSE検査されておらず、全頭検査を実施しようとした大手食肉会社に対して農務省が「他の会社への圧力になる」として拒否したと述べています。
社説は、米政府が「安全性を確保することで他国の信用を得るのではなく、政治的影響力に頼っている」として、ブッシュ大統領が日本に米国産牛肉の輸入再開の圧力をかけていることをあげています。