2005年8月29日(月)「しんぶん赤旗」
アスベスト
企業の責任不十分
緊急シンポ 新法で専門家指摘
アスベスト(石綿)による肺がん、中皮腫などの健康被害をめぐって、「どんな健康対策がいま必要か」などをテーマにした緊急シンポジウム(主催、石綿対策全国連絡会議ら)が二十八日、東京・千代田区で開かれました。
シンポには、酸素チューブをつけた患者ら約二百五十人が参加。報告者らは、使用禁止が遅れたことによる健康影響の広がりに警鐘を鳴らすとともに、製造工場周辺の住民、労働者や家族だけでなく、アスベスト建材をあつかった建設労働者や家族ら健康被害者の救済を訴えました。
健康への危険を早くから指摘してきた早稲田大学の村山武彦教授は、今後十万人の中皮腫の患者がでるという予測を紹介。工場や建物解体・改築というアスベスト発生源周辺での被害では「公害的側面がある」と指摘しました。今後について、「企業が社会的責任をとっていくしくみが必要です。新法で、被害補償としてほとんど税金を使うというのでは、企業の役割がないがしろにされ、問題だ」と述べました。
一九八九年に大気中のアスベスト濃度を規制した大気汚染防止法について、敷地境界基準(一リットル中十本以下)は国際的な基準から緩すぎると指摘。基準の見直しとともに、十六年間も緩いままになっていたことの検証が必要だと訴えました。
京都大学の内山巌雄教授らは、建物解体・改築時にアスベストを吸い込んだり、建物内で吹き付けアスベストによる健康被害の実例を報告し、通達をだしっぱなしですます行政対応の問題に注意を喚起しました。