2005年9月4日(日)「しんぶん赤旗」
主張
庶民増税
「郵政」の後につづく激痛
小泉首相が一日夜の党首討論(日本テレビ系「きょうの出来事」)で、「(所得税の)控除の見直しも当然やります」と明言したことはきわめて重大です。
首相の諮問機関である政府税調が六月発表の報告書に盛り込み、世論の批判を浴びた「サラリーマン増税」とは、所得税の控除見直しにほかなりません。小泉首相は「いわゆるサラリーマン増税の考えはない」とのべて批判をかわしてきましたが、もう増税隠しは通用しません。
■国民を“だまし討ち”
政府税調が打ち出した給与所得控除、配偶者控除、扶養控除などの縮小・廃止―。
これが国民に衝撃を与えたのは、給与所得控除を半減にとどめた場合でも、政府が既定方針にしている所得課税の定率減税廃止と合わせて十兆円規模の大増税になるからです。
年収五百万円の四人家族で四十二万円もの増税です。
自民党も公明党も選挙公約に消費税増税の方向を書き込んでいます。自・公が昨年十二月にまとめた与党税制大綱には、所得税の控除の見直しをやると明記しました。
自民と公明は郵政民営化で経済も財政も、社会保障も外交もよくなると、荒唐無稽(むけい)なバラ色宣伝を繰り返しながら、とてつもない庶民増税を計画し、それを隠そうとしています。国民に対して“だまし討ち”をかけるような態度です。
民主党も「サラリーマン増税には反対」と言いながら、「マニフェスト」に配偶者控除や扶養控除を「廃止する」と書き、消費税増税を明記しています。与党と大同小異です。
見過ごせないのは、庶民増税が、財界・資産家らへの減税の大盤振る舞いを穴埋めする増収策として進められようとしていることです。
小泉首相は日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)らによる大企業減税の要求を受け、就任二年目の二〇〇二年、「あるべき税制改革」を政府税調に諮問。経済財政諮問会議でも、メンバーの奥田会長らの提案に基づいて議論しています。
焦点になったのは、深刻な財政赤字のもとで、減税の財源をどうするのかということです。
政府税調の会長を諮問会議に参加させるなどして調整を図った結果、〇二年十一月、政府税調が「あるべき税制」の答申をまとめました。
答申は、当面、研究開発や設備投資に対する法人税減税一・二兆円、相続税の最高税率引き下げなどを先行実施するとしました。三兆円規模の減税となっている一九九九年からの法人税減税や、所得税の最高税率引き下げはつづけます。
問題の減税財源は、数年をかけて、所得課税の定率減税や諸控除を縮小・廃止することでまかなうこととしました。答申には給与所得控除の縮減も書き込まれています。
■大企業の減税財源に
法人税そのものの税率引き下げについて答申は、「所得税、消費税を含む税体系全体のあり方の見直しの中で、検討すべきである」としました。法人税率の引き下げは消費税増税とセットで、とのべているのです。
「サラリーマン増税」も消費税増税も、本当の理由は、財界や大資産家、高額所得者の負担を減らしてやるためだということが浮き彫りになっています。
財界・大企業は過去最高の大もうけで八十二兆円もの余剰資金を抱えています。その減税のために、所得を減らしつづけている家計に増税を強いるのは本末転倒です。