2005年9月5日(月)「しんぶん赤旗」

郵政民営化とアメリカの政府・財界の介入

東京・調布での不破議長の演説から


 日本共産党の不破哲三議長が四日、東京・京王調布駅前での演説で、小泉首相の「郵政民営化」を批判した部分(大要)を紹介します。


■だれのための「改革」かが大事

 今回ぐらい改革という言葉が、あちこちで叫ばれているときはないでしょう。自民党は「改革を止めるな」。公明党は「改革を前へ」。「改革」といいさえすれば、何かいいことをやる政党に見えると思っているようです。しかし、みなさん、だれのための改革かということが一番大事ではないでしょうか。(拍手)

 小泉さんが「改革の本丸」と言っている郵政民営化。だれかここにおられるみなさんが、「いまの郵便局の制度は不便だから改革してくれ」と要求したことがおありでしょうか(「ない」の声)。国民の側からは民営化への改革を求める声は、どこからも出ていないのです。

 では、だれがこんどの「改革」を求めているのか。小泉さんが口を開けば、「官から民へ」と言うでしょう。この「民」がくせものなんですね。「民へ」と言うから、国民のことだと思ったら大間違いです。これは「国民」の「民」でも、「市民」の「民」でもないのです。「民間大企業」の「民」なんです。郵政の問題で関係のある「民間大企業」と言えば、まず郵便局の簡易保険の競争相手である保険会社と、郵便貯金の競争相手である大銀行です。それが民営化を要求している「民」なんですね。郵便局がみなさんから多くの貯金をあずかって、銀行の競争相手になる。みなさんが簡易保険にどんどん入ると、生命保険会社の競争相手になる。それで、郵便局がじゃまでじゃまで仕方がない。できればなくなってもらいたい。せめてもっと仕事を減らして、自分たちがもっと手広く商売できるようにしてもらいたい。それがみなさん、「民営化」をずっと要求してきた一番の張本人なんですよ。だから今年の二月、「朝日」「読売」「毎日」「日経」「産経」、全国五大新聞にいっせいに一面ぶち抜きの大広告が出ました。全国銀行協会と生命保険会社の協会が、大枚を投じて郵政「民営化」賛成の宣伝をやったんですね。

■首相のいう「民」には米国の保険会社も

 ここでもう一つ私がみなさんに見てほしいのは、このごろテレビのコマーシャルで、アメリカの保険会社の宣伝がすごいでしょ。このアメリカの保険会社も小泉さんがいう「官から民へ」の「民」の中に入っているんですよ。アメリカの保険会社が日本に乗り込んで地盤をつくってきました。そして、郵便局の簡易保険がなかったら、もっとうまい商売ができるはずだということで、アメリカの政府を突っつくのです。「日米交渉でもっとちゃんとやってくれ」。それで日米間では、去年の夏から、アメリカの保険業界も直接くわわって、すごい強談判(こわだんぱん)が始まっています。九月に小泉さんがニューヨークに行って、ブッシュ大統領と会談したら、アメリカ側はこの首脳会談の議題にまで「郵政民営化」を持ち出したのです。「ちゃんとやるんだろうな」(ブッシュ)、「大きな反対があってもがんばります」(小泉)、「それでやってくれ」(ブッシュ)――そんなことをみなさん、日米首脳会談でやっているんですよ。

 去年の十一月には、日本の「民」とアメリカの「民」が一緒になって、東京で「日米財界人会議」を開きました。そこで発表した共同声明の中に、「日本では、郵便貯金も簡易保険も、本来は廃止すべきである」。日本の民間大企業とアメリカの民間大企業が一緒になってそんな共同声明をだす、そこまできているんです。

 それで、この三月にはアメリカ政府の側から、「去年の夏の交渉で、アメリカの生命保険業界を代表して日本政府にぶつけた要求は、日本政府の郵政民営化の“設計図”にその多くが書きこまれた」、こういう対日交渉報告が発表されました。

 「郵政民営化」は日本の国民そっちのけですすめてきたのです。日本の「民」――保険会社と銀行、それにアメリカの「民」――保険会社が一緒になって、自分たちのもうけ仕事がやりやすいように、日本の郵便局の制度をつくりかえるか、これが中心です。

 最近、『週刊ダイヤモンド』という雑誌に利用者からのアンケート調査が出ていました。「日本の金融機関の中で、どこが一番満足度が高いか」。答えは、郵便局がずば抜けてトップでした。「近くにある」「数が多い」「手数料が安い」がその理由です。郵便局がいいサービスを提供していることが、日本とアメリカの銀行や保険会社にとっては、じゃまで困ることなんですね。「競争が公平になるように、郵便局をとりしまれ。やがてはなくしてほしい」

 みなさん、郵便局を使っているのは国民のみなさんですよ。みなさんのことはそっちのけにして、アメリカや日本の銀行、生命保険会社の言うがままに、勝手放題に郵便局を切り縮め、仕事の手足をしばる。みなさん、そんなことを許すわけにはゆかないではありませんか。(拍手)

 だから、日本共産党は、郵政民営化にはキッパリ反対なんです。利用しているのは国民なのですから、この制度に国民の目からみて問題があるなら、それに応じて改革すべきです。競争相手の注文だということで、利用者に犠牲を負わす――「民営化」を無理やり強行するのは絶対反対、これが私たちの態度です。私は国民主権の国だったら、これが正論だと思います。(拍手)

■なぜ日本の政界では正論が通らないのか

 ところが、みなさん、日本の政界ではこの正論が通らないんです。国会では小泉さんの郵政法案が通りませんでした。では反対したところがみんな「民営化」反対かというとそうではないのです。テレビ討論でもわかるでしょう。民主党は小泉型の民営化はだめだが、岡田型の民営化ならいい、造反派は新党型の民営化でいこう。「民営化」反対とはいわないのですよ。後ろに日本とアメリカの財界がついているとなると、はっきり反対とはなかなかいえないんですね。

 そこにはいろいろな思惑があるでしょう。しかしみなさん、こういうときに、財界・企業からの政治献金がものをいうのだということを、よく見てほしいのです。いま、日本経団連という財界団体はなかなかあつかましくなりまして、政治献金をするときに政策のヒモをつけています。その政党の政策が財界の言い分にどれだけ近いかを評価して、近いものに多く献金する。少ないところが、もっとほしければ、もっと財界寄りになれ、こういう露骨なことをやるんですね。そういうヒモつきのお金を財界団体からもらっているのが、自民党と民主党です。経団連の発表によると、去年一年間で自民党に二十二億二千万円、民主党に六千万円の献金です。金額に大小があっても、この献金をもらえば、ヒモがつくのは同じなんですね。もっとほしければ、財界寄りになりなさい。こういうヒモが、いま意図的につけられているということを、みなさんよく見てほしいのです。


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