2005年9月6日(火)「しんぶん赤旗」
主張
BSE対策
「全頭検査」でわかる各政党
BSE(牛海綿状脳症)の発生を受けた米国産牛肉の輸入停止から二十カ月がたちます。六月には二例目となる感染牛の公表がありました。
ブッシュ政権は、「米国の牛は安全だ」といって日本に輸入再開を迫っています。これは食の安全にかかわる重大な問題であり、政府はもちろん、政党の態度も問われています。
■ゆがめられた国内措置
日本は、二〇〇一年九月にBSEが発生して以降、食肉処理される牛の全頭検査と危険部位の除去、トレーサビリティ(生産・流通の経歴追跡の仕組み)を行い、牛肉の安全性を確保しています。輸入再開をいうなら日本と同じBSE対策をとってほしい―。これが国民の声です。
米政府は、日本と同等の安全策をとるのではなく、逆に全頭検査の緩和を、日本政府に迫りました。米国では、BSE検査は、食肉処理される牛のわずか1%未満です。
小泉内閣は、米国でのBSE発生一カ月後の衆院予算委員会(〇四年一月二十六日)では、輸入牛肉に全頭検査を求めることについて「やることは当然のこと」(農水相)、「農水大臣の答弁のとおり」(首相)としていました。
ところが、米政府の「全頭検査は非科学的だ」の攻撃が強まると、〇四年四月には日米協議で「夏をめどに輸入再開の結論」を合意し、内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会に国内のBSE対策の見直しを押し付けました。九月には、専門調査会委員の合意をみないまま「二十カ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である」とする「中間とりまとめ」を無理やりとりつけました。これをもとに十月十五日、農水・厚労両省は食品安全委員会に対し、BSE検査の対象を二十一カ月齢以上とする諮問を行いました。同時に十月二十三日、米政府との間で二十カ月齢以下の米国産牛肉・内臓の危険部位を除去して輸入することを合意しました。
■自公民社、公約ふれず
一連の経過は、国内のBSE対策が米政府の圧力でゆがめられ、日本政府が、食の安全より米国の利益を優先させたことを示しています。
全頭検査を維持してほしいという、国民の反対を押し切り、今年七月に国内のBSE検査の対象を二十一カ月以上とする政令改定を実施。経過措置により全都道府県で全頭検査が維持されていますが、国基準の改悪は重大です。
米政府は、二例目となるBSE感染牛が米国生まれで、「安全だ」とする根拠が失われたあとも、“感染牛は十二歳。若い牛にリスクはない”といいはっています。輸入牛肉の安全性を評価する食品安全委員会の議論も大きな山場を迎えています。
全頭検査の緩和は国民の要求からではなく、米政府から出たものです。これへの対応は、だれのための政治をするのかという、基本姿勢が問われる問題ですが、日本共産党以外の各党は、公約でまともにとりあげていません。
自民党は「適切に対応」とし、公明党はふれずじまい。公明党の議員は、農水相の「全頭検査は世界の非常識」発言を引き出し、「勇気ある答弁」と持ち上げました。民主党は「食に対する不安を解消」、社民党も「日本と同等の安全対策」をかかげますが、全頭検査は明記していません。
日本共産党は、全頭検査と危険部位の完全な除去などを不可欠とする政策を提起し、食の安全を守る党として全力をあげています。