2005年9月6日(火)「しんぶん赤旗」
外国特派員協会での
志位委員長の講演(要旨)
日本共産党の志位和夫委員長が五日、日本外国特派員協会でおこなった講演(要旨)は、次の通りです。
選挙戦の争点にかかわって二つの問題についてお話ししたい。
■郵政民営化問題について
一、一つは郵政民営化問題だ。わが党は、ことの本質を明らかにする論戦をおこなってきた。郵政民営化は、国民が願って始まった動きではない。一言でいえば、アメリカと日本の大銀行と保険会社の要求から始まった動きだ。
たとえば、全国銀行協会など大手銀行筋は、そろって「郵貯・簡保は民業圧迫」といいたてている。「民業」とは民間大銀行のことだ。大銀行などからみれば、自分たちよりサービスのよい郵貯・簡保は、商売の邪魔でしかたがない。高い手数料をとりたてよう、投資信託のようなリスクの高い金融商品をおしつけようというのが、狙いだ。庶民の大切な生活資金を、新しいもうけ口にしていこうというのが、この動きの根底にある。
さらにアメリカの保険会社など財界の強烈な要求がある。その声を代弁して、昨年九月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領が民営化について推進を迫り、首相は「しっかりやっていく」と約束した。さらに十一月には、日本とアメリカの財界人が一緒になって「日米財界人会議」を開いているが、その「共同声明」のなかで、「郵貯・簡保が日本国民一般にユニバーサルサービスを提供しつづける必要はなく、本来的には廃止されるべきである」と明記している。これらの日米の財界の要求を代弁してつくられたのが、小泉・民営化法案だった。
一、わが党は、小泉・民営化法案の本質が、アメリカと日本の大銀行筋の新しいもうけのために、国民サービスを犠牲にするものであることを明らかにしてきた。首相があげた民営化推進の二つのウソ――郵政公社には一円の税金も入っていないのに「公務員が減らせる」、郵政公社のままなら利益の五割を国庫に納付するのに「民営化すれば、法人税が入ってくる」という主張を批判し、民営化法案が道理のない国民にとって有害きわまるものであることを明らかにしてきた。
一、重要なことは、このもとで、この選挙に参加している自民・公明以外のすべての政党が、郵政民営化にたいする立場はさまざまだが、小泉・民営化に反対するという点では一致しているということだ。
選挙後の特別国会では、小泉・民営化法案の是非が問われてくる可能性がある。そのときに、小泉・民営化法案に反対する国会共闘をおこない、この悪法をほうむりさることを提唱したい。国会でこの共闘をおこなうことを、小泉・民営化法案に反対するすべての政党に呼びかけたい。
もちろん、小泉・民営化法案に反対する政党のなかでも、郵政民営化そのものにたいする態度には大きな違いがある。そのことについて、これまでも率直な批判と論争をしてきた。今後の選挙のなかでも、たがいに批判・論争をおこなうことは当然のことだと考えている。
わが党は、郵政民営化そのものに反対をつらぬく日本共産党が伸びることが、小泉・民営化法案をほうむるうえでも、いちばんたしかな力になることを訴えて、大いに前進を期したい。
■靖国問題について
一、いま一つの問題は、靖国神社問題だ。四日に各党の幹事長・書記局長が出席したNHK討論番組があった。そこでは、この問題が主題の一つになったが、首相の靖国参拝を支持したのは、自民党の代表だけだった。
一、わが党は、問われていることの核心は、靖国神社の歴史観、戦争観――「日本は正しい戦争をした」という侵略戦争を正当化する立場にあると問題提起し、ここへの首相の参拝は、この間違った戦争観に、政府公認のお墨付きをあたえることになると厳しく批判し、中止を求めてきた。
一、この問題提起は、内外の世論に影響をあたえ、論調の変化をつくった。さらにアメリカ、フランス、イギリスの有力紙が相次いで、靖国神社の戦争観を問題にする論説を掲げた。とくに注目したのは、アメリカの下院議会の決議に、戦後六十年にあたって、日本の戦争犯罪を再確認することが書き込まれたことだ。この問題は、アジアと日本の関係にとどまらない。日本と世界の関係の問題だ。あの戦争が正しかったといえば、戦後の世界の成り立ちの土台を壊すことになるからだ。
一、この問題を、日本国民の良識と世論の力で打開するために、ぜひ力を尽くしたい。歴史をゆがめる教科書の採択も、わずか0・4%にとどまった。国民の良識と世論の力で、靖国参拝をやめさせれば、日本外交の前途で大きな展望が開けてくる。
一、小泉首相は、四日の党首討論のなかで、「参拝をやめたって、日中関係はよくならない」とのべたが、これは日中関係の改善のために何かをしようという意思そのものがない――日中関係を改善する戦略をまったくもたない無責任な姿勢だ。こうしたもとで、この選挙で審判を下し、国民の良識と世論で靖国参拝を中止させることは、大きな意味をもつと思う。
■質問にこたえて
――国会共闘との関係で、選挙後の特別国会での首相指名選挙で、野党の政権共闘はあるのか。
志位 内政、外交の基本問題で、自民、民主に大きな違いはない。増税、改憲などで、私たちとまったく対立する立場に立っており政権共闘の条件はない。この国会共闘の提起は『たしかな野党』としての仕事の一つとして理解していただきたい。
――同法案の否決の可能性は。
志位 小泉首相は、選挙で過半数を得れば、特別国会に法案を提出するだろう。その時にはまず衆院でくいとめる。かりに衆院で強行されたとしても、小泉・民営化法案にしっかり反対する国会共闘があれば、この法案は参院で否決できる。国民の利益のために、この法律をどうしても通してはならないという立場で、きょうの提案をした。