2005年9月6日(火)「しんぶん赤旗」

郵政・年金・外交―何が問題か

NHK政党討論

市田書記局長が発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は四日夜、NHK番組「衆院選特集―政党討論」に出席し、郵政、年金、外交問題などをめぐって各党代表と討論しました。


■郵政民営化論 二つのウソ

 自民党の安倍晋三幹事長代理は「自公案では(郵貯・簡保は)政府保証が外れて百四十兆円ぐらいになる。三十兆円はリスク資産として運用する」とのべ、民主党の菅直人選対副本部長が「郵貯・簡保は半分にした後、なくすかどうかは選択肢」と主張しました。

 市田氏は、自民・公明の民営化論には「二つの大ウソがある」として、次のように指摘しました。

 市田 税金の節約になるというが郵政公社で働く二十七万人の職員にも郵政事業にも郵便局の維持にも税金は一円も投入されていない。「民営化すれば税金が入る」というのも大うそです。公社のままなら利益の50%を国に納付しなければならない。法人の実効税率の方が40%で低い。しかも二〇一六年に公社のままなら黒字だが、民営化すれば赤字になる。赤字を出す企業がどうして法人税を払うのか。一円も入って来ない。民営化論は生活資金を守るという利用者の立場に全然たっていない。

 市田氏の発言を公明党の冬柴鉄三幹事長がウソよばわり。新党日本の荒井広幸幹事長も含め次のようなやりとりがありました。

 冬柴 市田さんはいつも(公社が)法人税より高いもの払っているというが、まだ払ってないじゃないですか。ウソついたら駄目ですよ。(公社は)固定資産税、法人税払っていますか、払っていないじゃないですか。

 荒井 公社は法人税より高い50%を納めることになっている。固定資産税も二百五十億円払っている。

 市田 (冬柴氏に対して)公共の電波を使ってそういうことを言うのはやめた方がいい。公社になってまだ二年なんです。四年間の利益の50%を国庫納付金として納めなければならないと決まっているんですよ。公社のままなら二〇一六年に千三百八十億円の黒字、その半分でも(国に納めるのは)六百九十億円です。民営化したら六百億円の赤字が出ると竹中さん(郵政民営化担当相)が言っている。(これがウソなら)ウソつきは竹中さんだとなる。

 冬柴氏は反論できませんでした。

■国民の財産をもうけの対象に

 自民、公明、民主の議論が郵貯・簡保の縮小問題に終始するなかで、市田氏は次のようにのべました。

 市田 三百四十兆円の郵貯・簡保は国民の財産です。老後や病気の備えとして、安全、安心だから集まった。これが邪魔でもうけの対象にしたいと思っているのは銀行や生命保険会社。自民党や公明党は民営化して赤字にして郵貯・簡保は廃止、民主党は半分に縮小して最終的に民営化も選択肢という。(国民の財産を危険にさらすという点で)自民、公明、民主は手順が違うだけで同じ道を歩んでいる。

■庶民に負担かぶせず最低保障年金の確立を

 年金問題についての討論で、安倍、冬柴両氏は、国民の七―八割の反対を押し切って強行した改悪年金法を「将来にわたっての構図を示した」と合理化。菅氏は「年金一元化」を主張しました。

 市田氏は「年金問題で一番の中心問題は、土台部分の国民年金だ」として、次のようにのべました。

 市田 リストラなどによって本来厚生年金に加入すべき人がパートや非正規雇用で国民年金に移り、経済的理由で保険料も払えずにいる。このまま放っておいたら一千万人の無年金者が生まれる事態になっている。ここをどうするか。この問題を解決するため、すべての国民に月五万円を全額国庫負担で保障し、払った保険料に応じて給付を上乗せする(「最低保障年金制度」を設ける)。民主党のように消費税でやると、所得の低い人ほど負担が重くなる。日本の企業の税金と社会保険料の負担は(GDP比で)ヨーロッパと比べてきわめて低い。ドイツ並みにするだけで七兆五千億円の財源が生まれます。大もうけしている大企業にきちんと負担してもらい、ムダな公共事業を削れば、庶民に負担をかぶせないで、最低保障年金制度を確立することができます。

 財源について菅氏は年金財源のための消費税3%増税を主張。冬柴氏は、二〇〇七年度に計画している税制全般の改革のなかで「消費税を省くということはしない」とのべました。

 大企業に負担を求める根拠について、市田氏は次のように語りました。

 市田 財源というと、自民も公明も民主も消費税ということになる。そこが問題です。大企業のふところに使い道がなくてごろごろしているお金が八十二兆円ある。経済の専門家でも『ここに課税しないのはおかしい』というのが、立場の違いを超えて共通の考えになっている。法人税収入はかつての年間二十兆円から十兆円に半分に減っており、ここに踏み込むべきです。

■靖国問題に目をふさぐから外交が八方ふさがりに

 日米関係、日本外交が議論になり、安倍、冬柴両氏はイラクへの自衛隊派兵に固執し、撤退期限の十二月には「そのときの状況に応じて判断する」(安倍氏)とのべました。

 イラク派兵について市田氏は次のように指摘しました。

 市田 アメリカと一緒にイラクに軍隊を送っていた三十八カ国のうち、二十カ国は撤退ないしは撤退計画を発表している。残っているのは十八カ国で国際的にも孤立しています。サマワ(自衛隊宿営地)には十発も砲弾が撃ち込まれ、サマワ日本友好協会の会長の家まで襲われ、(同協会は)“アメリカの側にたっているところと一緒にやるのは危ない”と解散した。ただちに撤退すべきです。

 日本の外交問題の議論のなかで、自民、公明、民主は首相の靖国参拝問題にはふれず、市田氏は「先の戦争を、正義の戦争、正しい戦争だったとする靖国神社に小泉首相が参拝し続けてきたことを安倍さんは一言もいわない」と指摘して、この問題をとりあげました。

 市田 靖国神社は日米開戦の責任はアメリカにあるとまでいっている。総理が靖国参拝するというのは戦後六十年、二度とああいう戦争はやってはならない、という戦後の出発点を根底から否定することになる。それが外交を八方ふさがりにしている。アジアで日本の国連常任理事国入りで(日本・ドイツ・インド・ブラジルが提出した「枠組み決議案」に)賛成しているのはモルディブ、ブータン、アフガニスタンだけです。アジア、世界から日本を孤立させている靖国問題に目をふさいではだめです。

 安倍氏は「総理は恒久平和を願い、靖国神社に参拝している」とのべ、参拝に固執する姿勢を示しました。

 討論のなかで、安倍氏は、拉致問題に関連して、北朝鮮工作員・辛光洙(シン・グァンス)の釈放要望の「署名」に菅氏が署名したと非難しました。

 これに対し、市田氏は「安倍さんの発言は不公平だ。菅さんも署名しているが公明党議員も署名している。それをどうしていわないのか」と批判しました。

 安倍氏も冬柴氏もこの件については一言も反論できませんでした。

 ▼辛光洙(シン・グァンス)事件 行方不明になった大阪の中華料理店員・原敕晁(はら・ただあき)さんになりすまして韓国に潜入した、北朝鮮の工作員・辛光洙が一九八五年に韓国政府に摘発された事件。八八年に日本共産党の橋本敦参院議員(当時)が国会でとりあげ、政府は辛光洙が北朝鮮工作員で拉致実行者であることを認める答弁をしました。にもかかわらず八九年に辛光洙らを含む「在日韓国人政治犯の釈放に関する要望」書に公明党・国民会議の国会議員六人や菅氏、社会党(当時)の土井たか子氏らが署名していました。


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