2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」
ごみ固形燃料発電所
三重の爆発事故から2年
“ごみ加工し、ごみ作る欠陥施設”
自治体に残る経費負担
二年前の二〇〇三年八月十九日、三重県企業庁のRDF(ごみ固形燃料)発電所のRDF貯蔵槽が大爆発。消防士二人が死亡、発電所の下請け作業員一人が重傷、あわせて七人が死傷するという痛ましい事故が起こりました。この事故は、国が、補助金をつけ、自治体に推奨してきた「夢の燃料」RDFの評価を一変させました。いまでは、「今後の新たなRDF発電施設の整備計画は、把握できていない」(〇四年度農水省委託事業報告書)という状況になっています。
RDFについては、(1)三重県の爆発事故をはじめ、RDF発電施設、RDF施設での火災、破損などの事故が相次いでいる(2)新たな規制により、安全対策費(たとえばRDFの貯蔵施設の事故防止対策費等)が増加(3)RDFは、ごみの分別に反し、資源循環法や容器包装リサイクル法と相いれない(4)RDF製造に、破砕・乾燥・加工など多大のエネルギーを要する(5)分散しているRDF製造施設から発電所への収集運搬費用がかかる(6)RDF化に別途エネルギーを使うので、RDF発電の総合エネルギー回収率は、一般廃棄物直接焼却より低い―などの問題点が指摘されています。
■事故総括ない
静岡県御殿場市の市長は、RDF施設に関する裁判で、「多額の費用をかけたRDFセンターは、いわば『ごみ』を加工して『ごみ』を作り出す欠陥施設だった」と陳述しています。RDF施設をつくった自治体の多くが、事故や重い経費負担に苦労しているのが実態です。
にもかかわらず、三重県は、県民の不安、反対をよそに、爆発事故の原因者の特定など、きちんとした総括もないまま事故の原因となったサイロは当面設けないという条件で、ごみ発電所を〇四年九月二十一日に、強引に再稼働させました。
日本共産党の萩原量吉前県議、関係市町村議員は、県に、くり返し「再稼働反対」を要請しました。
RDF発電施設では、この一年で、基盤を入れかえるために、ボイラーを停止したり、灰のかき出しで、作業員がやけどを負うという事故が起こり、その部分を自動化したなど、安全に関する問題が依然として起こっています。そのうえ、ちょうど事故二年目の八月十九日には、施設の送電線に落雷し、すべてのボイラーがとまるという突発事故も起こりました。
RDFは、爆発事故で明らかになったように、保管技術さえ確立されていなかった未完成なものです。何が、どのような割合で入っているかわからないごみが対象の施設として、安全に関する問題の発生は、避けて通れません。コスト面でも、通常の一般廃棄物の焼却より費用がかかるという問題を抱えています。
■自治体の反発
三重県は、RDF発電で、〇四年度、五億八千七百七十八万円の損失を出し、〇五年度も四億八千万円の損出が出ると見込んでおり、〇三年度からの累積赤字が十七億二千万円にもなります。そのため、各利用自治体に、処理費用を大幅に値上げしたいと提示し、自治体側の反発を招いています。
県は、赤字の要因として、▽電力収入減▽最終的に20%出る灰の処理費用にトン当たり約三万円かかる▽人件費が、安全対策強化(RDFの受け入れ検査を厳格にしたなど)のため五・五倍に増えた―などをあげています。
〇五年度からは、施設建設費の償還が始まります。しかも、一千トン規模の貯蔵施設を新設するという計画があります。建設費は、国、県が主だといいますが、ランニングコストは、当然、自治体にはね返ります。さらに、事故による損害額は四十億円にものぼっており、誰がどう負担するかは、不明のままです。
企業庁は、独立採算なので、必要な経費は、当然利用者負担となると説明しており、今後、自治体の負担が、際限なく増えていくことが危ぐされます。自治体負担は、結局、住民負担となります。すでに、RDFに参加している自治体の一部で、ごみの収集手数料の有料化が準備されているという状況も生まれています。このままでは、大変なことになります。
■ごみ排出削減
RDF発電に参加している自治体は、資源循環に逆行し、莫大(ばくだい)な費用がかかるRDFに頼るのではなく、徹底したごみ排出削減のために、▽ごみをもとでなくす▽再利用を最優先する▽そのうえでリサイクルする▽燃やすのは、最小限にする―などを基本にしたごみ問題解決の方向に転換するのかどうかが問われています。
自治体として、住民の協力のもとに、ごみ問題に真剣に取り組むべき時期にきています。三重県の広域ごみ処理は、RDF発電施設の大事故を通して、破たんしたことが明らかになりました。他山の石として、教訓をしっかり学び、今後のごみ行政に生かしていくことが大切なのではないでしょうか。
(日本共産党市民住民運動局長・岩佐恵美)