2005年9月16日(金)「しんぶん赤旗」
川辺川ダム強制収用取り下げ
県民ぐるみ運動の勝利
日本共産党の仁比聡平参院議員の談話 党派を超えた県民ぐるみの世論と運動の歴史的勝利です。関係各位に心から敬意を表します。五木村をはじめ、流域住民の長い間の苦労と混乱を考えれば万感の思いを禁じ得ません。「ダムありき」の根を絶ち、住民参加の新利水事業、河川改修や浚渫(しゅんせつ)など総合的な治水対策を進めるために今後も力を尽くしたい。
■解説
■新利水計画作成は困難国は無駄な事業断念を
川辺川ダムの総事業費は、三千三百億円の巨大事業で、環境破壊と無駄な事業の典型的な存在です。このためダム建設反対運動がねばり強くつづけられてきました。この結果、国はダム本体工事に着工できず、二〇〇四年以降は予算請求もできない状況に追いこまれています。
一昨年五月の福岡高裁の判決は、土地改良法で定める農家の三分の二以上の同意がないとして、川辺川利水事業変更計画を違法として取り消しました。
この画期的な判断を受け、農水大臣は「農業用水の確保については、関係農家の意向を確認して、必要な整備を進める」との談話を公表。熊本県をコーディネーターに原告・弁護団も入った関係者の事前協議が続けられてきました。
事前協議で、九州農政局は、五つの利水案のうちダム利水案がもっとも安く早くできると固執しました。しかし、農家四千四百五十三軒にたいするアンケート結果では、利水を望む農家は23%にすぎず、ダムによる利水を望む農家はわずか4%しかないことが明らかになりました。
原告・弁護団は、大臣談話のとおりこの農民の意向を無視した利水案を撤回すべきだと主張し、五つの利水案はとうとう棚上げされることになりました。
農水省は、地元のダム推進派や国土交通省の意向を受けて、あくまで農家に水を押しつけるダム利水の方向を追求しようとしています。しかし、経過が示すように農水省がダムにこだわる以上、新利水計画をつくることはきわめて困難だとわかります。
川辺川を支流に持つ球磨川本流には、すでに市房、荒瀬、瀬戸石の三つの発電ダムができています。その影響で、球磨川本流は清流の面影を失い、ダムの悪影響は不知火海に広がっています。これにたいし、ダムのない川辺川は全国に誇る清流が保たれています。環境を壊すだけの無駄な事業を国は早く断念すべきです。(松橋隆司)
■川辺川ダム計画をめぐる動き
【1966年7月】 建設省(現国土交通省)が川辺川ダム計画を発表
【84年6月】 農水省が土地改良(利水)事業を決定
【2001年12月】 国交省が地元漁協の漁業権の強制収用を熊本県収用委員会に申請
【03年5月】 福岡高裁、農水省の利水事業を事実上無効とする控訴審判決。国は上告断念
【6月】 農水省、熊本県、原告団などが新利水計画の策定で合意
【10月】 県収用委が新利水計画の策定まで審理中断
【04年9月】 国交省がダム建設の総事業費を3300億円と試算
【11月】 県収用委が審理再開、05年春までに新利水計画を示すよう国交省に求める
【05年8月】 新利水計画まとまらず。県収用委、国交省に強制収用の申請取り下げを勧告
【9月】 国交省、強制収用の申請を取り下げ