2005年9月23日(金)「しんぶん赤旗」

主張

バスラの警察署攻撃

占領軍は引き揚げるしかない


 イラクでは、北西部を中心に米軍が激しい軍事攻撃を展開する一方、市民をまきこむテロも後を絶たず、十四日からの一週間で三百人ものイラク人が犠牲になるほど情勢が悪化しています。

 以前は比較的安定しているといわれた南部の主要都市バスラの英軍が、イラク警察の刑務所に戦車を突入させた攻撃(十九日)などは、占領の無法さをあらためて実感させるものです。

■激しい怒りと抵抗

 英軍特殊部隊兵士ふたりが諜報(ちょうほう)活動中にイラク警察と交戦になり、拘束されたのを奪還するための作戦だといいますが、もともと米英軍が育成してきたはずのイラク警察さえ信用できず強行した軍事作戦です。

 バスラでは、英軍への爆弾攻撃が相次ぎ、五日に二人、十一日に一人の英軍兵士が殺されました。英軍は犯人捜索作戦で三人を拘束していました(十八日)。これに抗議して連日、住民が街頭にくりだしており、警察署におしかけて英兵を「人質」にとろうとしているとのうわさがとびかうなかで、英軍は、警察署攻撃を強行しました。

 現地からは「警察官が祈っている部屋に戦車砲が撃ち込まれた。これはテロだ」(警察官)「英米であれ他国であれ、われわれは占領軍を拒否する」(バスラ住民)と怒りと抗議が伝えられます。

 占領軍と現地住民との緊迫が高まる関係を、「多くの市民は、英軍に扱われるやり方を受け入れていない。英軍には怒りと不満のいりまじった感情を抱いている」と表現するイスラム政党幹部の声もあります。

 そもそも米英軍のイラク戦争は、ウソの口実で攻め込み、イラクの人々を何万人も殺し、国土を破壊してきた無法な侵略戦争です。いまも米国は十四万の米軍で北西部のスンニ派地域掃討、壊滅作戦を続け、殺りくを重ねています。米軍兵士の死者も千九百人を超え、戦争は「泥沼化」しています。

 イラクの情勢を転換するには、占領軍撤退の見通しをはっきりさせることが重要です。

 スンニ派だけでなくシーア派の指導者からも「米軍は自分たちが撤退すれば、イラクがテロリストの手に落ちるというが、米軍の存在こそ、テロ続発の元凶。イラクの活路は、まず米軍の撤退時期をあきらかにすることだ」(アリ・ジュブリ師)という声が強まっています。

■「出口」戦略をもて

 米国内でも、「早期撤退は米国を弱める」といい続けるブッシュ大統領にたいして、世論調査で六割以上が米軍撤退・駐留縮小を求めるようになっています。「軍事作戦では、蜂起、テロを収められない」(現地駐留米軍報道官)「米軍撤退を宣言すれば、イラク各派指導者の気持ちを(安定に向かって)集中させられる」(ワシントン・ポスト紙論評)と、「出口」戦略の議論が盛んになっています。

 自衛隊が駐留するサマワは、英軍の「管轄」下にあります。情勢悪化は、サマワも例外ではありません。

 小泉首相は、「イラクにおける自衛隊の活動はしかるべき時期に判断する」(二十一日)といいますが、自衛隊は、米軍指揮下の「多国籍軍」にくわわり、米軍兵士、物資の輸送を担っています。イラクの人々は、占領軍とみなし、怒りを高めています。

 自衛隊を速やかに撤退させ、イラク情勢の打開にふみだすべきです。


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