2005年9月23日(金)「しんぶん赤旗」
第3次小泉内閣発足
与党“2/3議席”で狙うもの
民意はそこにありますか
「今回の総選挙の結果を、『引き続き構造改革を進めよ』との国民の声だと受け止める」(21日)――。第3次小泉内閣の発足で小泉純一郎首相は、総選挙での「圧勝」をたてに、小泉「改革」をさらに進めるかまえです。しかし、本当の民意はそこにあるのでしょうか。
■「小泉改革」
■懸念を抱く国民
郵政民営化法案を特別国会で成立させることは「民意の尊重」だ――小泉首相は二十一日の記者会見で強調しました。
しかし、自公両党で三分の二以上の議席というのは、小選挙区制による“水ぶくれ”。与党は小選挙区では49・1%、比例代表では51・5%しか得票していないのです。郵政民営化の賛否は半々というのが実態です。
共同通信社の世論調査では、郵政民営化法案を「慎重に議論すべきだ」が53・4%で、「特別国会で成立させるべきだ」の37・1%を上回りました。慎重な審議こそが「民意」です。
小泉首相が進める「構造改革」の本質は、国や大企業の負担を減らし、国民にツケを回すというもの。二十一日に開会した特別国会でも、社会保障の分野で、障害者が福祉サービスを利用するほど利用料も高くなる障害者「自立支援」法案の成立がたくらまれています。
NHKの世論調査(十七―十九日実施)では、自民党の議席について「もっと少ない方がよかった」が53%と圧倒的。国民いじめの政治が数を頼みに強行されることに、国民は懸念を抱いています。
■庶民大増税
■乱暴なねじまげ
「恐らく国民のほぼ全員が、『増税反対』と考えて投票したはずだ」(『週刊ポスト』九月三十日号)。今回の総選挙で自民党は、武部勤幹事長がいったん口にした二〇〇七年度消費税率引き上げをすぐに撤回するなど、徹底して増税隠しを行ったからです。
六月の東京都議選の最中に、「政府税調のサラリーマン増税ありきを自民党は『許さない!』」とこぶしを握る武部幹事長の写真入りビラを作成。総選挙公約にも「『サラリーマン増税』を行うとの政府税調の考え方はとらない」と明記しました。
ところが、選挙が終わったとたん、増税の話が次々と飛び出しています。
谷垣禎一財務相は十三日の記者会見で、所得税や消費税の「見直し」の必要性を強調。すでに半減が決まっている所得税・個人住民税の定率減税の全廃(サラリーマン増税の柱の一つ)に向け、具体的な検討に入っています。
「どこかで増税も必要なのではという(国民の)気持ちも(自民圧勝の)背景にはあった」(同日)とまで言う谷垣財務相。あまりに乱暴な民意のねじまげです。
■憲法改悪
■矛盾広がる一方
「憲法が変えられるんじゃないかと心配だ」(群馬・伊勢崎市の男性)、「(与党で)三分の二議席! まず浮かんだのが憲法改正への不安だった」(東京・小平市の男性)――。リスナー(聴取者)が直接意見を述べるTBSラジオ番組「アクセス」(十六日放送)では自民党に投票した人を含めてこんな声があがりました。
選挙中も、首相再任の記者会見でも、憲法問題を一切語らなかった小泉首相。自民、公明両党は選挙公報に「憲法」の文字さえ掲げませんでした。憲法問題を争点から徹底的に隠したのです。
ところが、選挙後、与党側からは「九条について、どこをどう変えればどうなるかも含めて議論する」(自民・安倍晋三幹事長代理)などと改憲を促す発言が相次いでいます。十月中に新憲法草案をまとめ、十一月の立党五十年の党大会で発表するのが自民党が描く段取りです。
第三次小泉内閣発足にあたって自民・公明両党は、改憲手続きを定めた国民投票法案を特別国会に提出する方針を確認。二十二日には同法案を審議する衆院憲法特別委員会の設置を強行しました。改憲を憂慮する国民との矛盾は広がる一方です。
■民主 「たたかう」 その中身は
選挙後、新体制になった民主党は「たたかう集団になる」(前原誠司代表)と強調しています。
問題はその「たたかう」中身です。「『改革』が競われる環境になったことはいいことだ」(同)と痛み押し付けの小泉「構造改革」を評価した同党は、今国会に郵貯の預入限度額の段階的引き下げの法案を提出することを決めました。民営化して郵貯・簡保をつぶすのが与党案なら、民主党案は郵貯・簡保を縮小し、成り立たなくさせて民営化するというものです。
憲法問題でも前原氏は「(戦力不保持の)九条二項を削減し自衛権を明記する」ことをあげ、改憲案づくりをはかる考えを表明。「まずは国民投票法案だ。きちんと議論したい」(「読売」二十二日付)という立場です。
小泉首相から「『第二自民党』という批判を恐れて、あえて協力できるものを協力しないのが随分ある。野党はますます与党に近寄らないと政権をとれない」(二十一日の記者会見)と、いっそうの“自民党化”を推奨されています。
■日本共産党 国民とスクラム
日本共産党の衆参十八人の国会議員団は、特別国会初日から「たしかな野党」としての旗を高く掲げました。国会の議員面会所前に志位和夫委員長を先頭に勢ぞろいし、「郵政民営化・憲法改悪・大増税反対」のデモに参加した人たちとエールを交換しました。
党本部にも「護憲のためにがんばって。共産党の正念場です」(女性)、「与党の間違った政策を否定していただきたい」(埼玉県の男性)などの声が寄せられています。「巨大与党」の暴走への危機感を多くの国民が強めるなか、「たしかな野党」日本共産党への期待や注目が高まっています。
日本共産党の志位和夫委員長は二十一日の国会議員団総会で、首相が郵政民営化で真実を語らず、他の重大争点を隠して選挙をたたかわざるをえなかったところに、自民党政治のゆきづまりが示されていると指摘。「主体的な奮闘によって、小泉政権を追いつめ、新しい情勢の局面を開くという攻勢的な構えで、この新しい国会にのぞみたい」と決意を表明しました。