2005年9月25日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

小選挙区制度

自民圧勝のからくり小選挙区制度

自民得票4割台で議席7割

全議席を比例代表選挙にすると日本共産党は35議席に


 先の総選挙で自民党は衆院総議席の6割にあたる296議席を得ました。“小泉突風”の影響だけではありません。得票率以上に議席獲得をもたらす小選挙区制という選挙制度が大きく作用したからです。マスコミも「小泉マジックならぬ小選挙区マジック」(「毎日」14日付)と弊害を指摘しています。

■衆院選のしくみは

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 いまの衆院の選挙制度は「小選挙区比例代表並立制」といいます。「並立制」と呼ぶのは、一選挙区から一人の議員を選ぶ小選挙区選挙と、政党の得票に応じて議席を配分する比例代表選挙という二つの選挙制度からなるためです。

 衆院の総定数は四百八十議席です。このうち三百議席を全国三百に分けた小選挙区で選び、百八十議席を全国十一に分けた比例ブロックで選びます。有権者は一人二票もち、小選挙区選挙で候補者名、比例代表選挙では政党名をそれぞれ書いて投票します。

 小選挙区制は各選挙区で最大得票数の候補者しか当選できないため、それ以外の候補者の得票は議席に結びつきません。小選挙区での当選には、有効投票の六分の一以上の得票がないとだめだと定められていますが、逆にいうと、最悪の場合、六分の五近くの有権者の投票が切り捨てられるのです。一方、比例代表は、ブロックごとに各政党の得票に応じて議席を比例配分するので、一票一票が議席に結びつきます。比例代表が「民意の反映」と呼ばれるのはそのためです。

■「民意ゆがむ」とは

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 この選挙制度は、民意を切り捨てるだけでなく、民意をゆがめたものにしています。

 今回自民党が得た二百九十六議席のうち二百十九議席が小選挙区です。

 この小選挙区での同党の得票率は47・8%(三千二百五十一万八千票)ですが、議席占有率は73%にものぼりました。この自民党の得票率と議席の乖離(かいり)は、いまの選挙制度が初めて実施された一九九六年以降のなかで最大です。(グラフ)

 逆に、民主党は得票率36・4%(二千四百八十万五千票)で議席占有率は17・3%(五十二議席)。日本共産党は得票率7・3%(四百九十三万七千票)で、議席占有率はゼロです。得票率に応じたら民主党は百九議席、日本共産党は二十二議席になります。

 一方、比例代表選挙はどうだったか。自民党は得票率38・2%(二千五百八十八万八千票)で議席占有率は42・8%(七十七議席)、民主党は31・0%(二千百三万六千票)で33・9%(六十一議席)、日本共産党は7・3%(四百九十一万九千票)で5%(九議席)と、大政党に有利ながらも民意を反映したものとなっています。

 全議席(四百八十)を全国一つの比例代表選挙にした場合、日本共産党の議席は三十五議席程度になります。小選挙区制がもたらす民意のゆがみは歴然です。

 十八日投開票されたドイツ連邦議会選挙は、同じ小選挙区制を導入しながらも、比例代表に重点を置いた選挙制度で、議席数は得票率に応じたものになっています。(別項)

■比例削減されると

 もともと小選挙区比例代表並立制が導入された一九九六年当初の衆院定数は、比例代表二百、小選挙区三百の計五百でした。これを二〇〇〇年に自民、公明、自由の与党三党が比例代表定数を二十削減。同年の総選挙から実施されましたが、「多様な国民の声を排除するものだ」と批判がおきました。

 ところが、今回の選挙戦では、この弊害をさらに大きくする政策を民主党が掲げました。比例代表定数の八十削減案です。八十削減すれば、総議席に対する小選挙区の比重はいまの62・5%から75%になり、民意を正しく反映できないゆがみをいっそう高めることになります。これでは、比例代表で議席を得ていた少数政党が締め出されるおそれがあります。

 今回の選挙結果で試算すると、別表のようになりました。北海道、北陸信越、四国の三ブロックで自民、民主両党が議席を独占、東北、北関東、東海、中国の四ブロックでは自民、民主、公明三党で占めるという結果です。日本共産党は三議席。今回、議席を得た国民新党、新党日本は議席を得られません。

■ドイツ総選挙 比例で議席配分

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 ドイツ国会下院の連邦議会の総選挙(十八日投開票)では、日本の衆院選挙のように有権者は二票を持っています。第一票は小選挙区選挙の候補者名で投票、第二票は十六ある州ごとに行われる比例代表選挙の政党名で投票します。しかし、比例代表制に重点を置いた選挙制度となっており、各政党の獲得議席は得票率に応じたものになります。

 連邦議会の基本定数は五百九十八議席で人口比によって各州に配分されています。半数の二百九十九議席が小選挙区選挙で選出されます。議席は州ごとに比例選挙での各党の得票に応じて配分され、その議席から小選挙区での当選者数を差し引いた議席が各党名簿から決定されます。

 たとえば、首都・ベルリンの基本定数は二十二。十二ある小選挙区の選挙では、社会民主党(SPD)七、キリスト教民主同盟(CDU)一、左翼党三、90年同盟・緑の党一がそれぞれ当選、自由民主党(FDP)は議席を獲得できませんでした。確定議席は比例の得票数に応じて、それぞれ社民党八、CDU五、左翼党四、緑の党三、FDP二と配分されました(表)。全国での最終的議席もほぼ得票率に比例したものとなっています。(グラフ)

 ただし、比例選挙の議席配分が得られるのは、全国的に5%を獲得するか、小選挙区選挙で三議席以上を獲得した政党に限られ、少数政党には著しく不利な制度となっています。今回の総選挙では、左翼党は8・7%を獲得、五十四議席を確保しましたが、二〇〇二年の前回総選挙では同党(当時は民主的社会主義党)は4・0%しか獲得できなかったため、それまで擁していた三十七議席をいっきょに失い、小選挙区選挙当選者のみの二議席に後退していました。

 国会上院の連邦参議院は、公選制ではなく州政府の代表で構成されます。

■“支持率よりも水ぶくれ” マスメディアも批判

 ◆「自公合わせても小選挙区で五割を切り、比例ですら五割そこそこ。この事実を勝者も敗者も銘記すべしです」「国民の支持率よりもはるかに水ぶくれした三分の二勢力と強腰の首相が、国民支持を錯覚して独裁に陥らないことを願わずにいられません」(東京新聞十九日付「社説」)

 ◆「今度の自民党の圧勝は国民の実感とかけ離れている。だから小泉首相は、勝った、勝ったと浮かれる前に、このことをはっきり認識すべきだ。特に腹立たしいのは、今の選挙制度では、自民党と民主党の二大政党以外の政党に投じた票の多くが死票になることだ。現代の複雑な社会では、多種多様な要求が生まれることに留意すべきではないか」(朝日新聞西部本社版十三日付「声」欄から)

 ◆「今回の自民党の圧勝も、全国の選挙区での得票数は、民主党の一・三倍にすぎなかったのに、議席数で二・六倍に膨れあがったものだ。小選挙区制の怖さである。…民意が、あらゆる問題で小泉首相に『白紙委任』したとは、受け取らない方がいいだろう」(中国新聞十三日付「社説」)

 ◆「一方で、自民党の圧勝は小選挙区制という制度にも起因する。政策本位で政権交代を可能にしやすくする制度として導入されたが、『風』の吹き具合で、極端な結果も生みやすい。民意をどこまで反映するかという新たな問題も提起した」(北海道新聞十二日付「社説」)

■比例定数80削減(民主党案)でこうなる

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