2005年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
主張
郵政民営化
首相は真実を語る責任がある
小泉首相は所信表明演説で、衆院選の選挙演説とほとんど同じ郵政民営化論を繰り返しました。
民営化すれば公務員を減らせる、財政再建にも貢献できる…。
郵政民営化で公務員が減らせると言いますが、郵政事業には人件費も含めて税金は一円も投入されておらず、民営化してもまったく税金の節約にはなりません。
■財政再建に逆行する
そもそも、「骨太方針2005」(六月に閣議決定)の公務員「改革」の項目には、「郵政民営化」の「ゆ」の字も出てきません。小泉内閣の公務員「改革」の目的は総額人件費の抑制です。この点では、税金投入を受けていない郵政は問題にもされませんでした。
警察職員は二十八万人いるのに郵政より少なく「警察官が二十五万人」とのべるなど、首相は小さなごまかしも駆使しています。
自民党の中川秀直国対委員長は二十五日のNHK番組で、「(郵政には)税金が投入されていないと言うが、法人税を払っていないなど『見えない国民負担』がある」と発言しました。
郵政公社は法人税の代わりに利益の50%を国庫納付金として国に納めます。郵政公社法と施行規則に明記されたこの事実を、首相や中川氏らが知らないはずはありません。
利益の50%というのは、大企業が払う法人税と法人事業税の実効税率40%よりも重い負担です。さらに郵政公社は、職員の基礎年金給付の三分の一に当たる国庫負担分の三百七十億円を、国庫に頼らずに自己負担しています。民営化されると、三百七十億円は国庫からの持ち出しに変わります。郵政民営化は財政再建にもマイナスです。
小泉首相は所信表明演説で、株式の売却が財政再建に貢献するとのべました。郵政事業は国民の財産です。それを売るのは、農家が田んぼを売るようなもので、一時的に現金収入が入るように見えても、国民共通の財産の流失です。
何より、首相は「外資倍増」をアメリカのブッシュ大統領に約束しています。財界の集会では、“外資にとって魅力的”な民営化を強調しました。郵政法案には、電力や放送、NTTなどに定められている外資による株式持ち分の規制はありません。
貯金・保険会社の株式売却は、アメリカ資本に大もうけを約束する機会になります。
首相は「郵便局のネットワークは維持する」とのべました。
民営化法案によると、貯金・保険は株式を完全処分し、全国共通サービスの提供義務を廃止します。利益優先の経営に変わった貯金・保険が、赤字や利益の薄い地域から撤退し、貯金・保険を経営の要とする郵便局そのものの存立を脅かすことは民営化の重大問題です。
“NTTの民営化で電話がなくなったか”と与党は言います。しかし、NTTや電力事業者などには全国共通サービスが義務付けられています。首相の言葉に反して、民営化法案の根幹はネットワークの維持とは根本から矛盾しています。
■国会で徹底議論を
小泉首相は選挙演説で隠し続けた郵政問題の「真実」を、国会でも語らずに通そうという姿勢です。
世論調査では五割以上の人が法案の「慎重審議」を求めています。
郵政民営化法案は民意に従って国会で徹底議論すべきであり、首相には、国民に事実をありのままに語る責任があります。