2005年9月29日(木)「しんぶん赤旗」
「小さな政府」とは?
〈問い〉 小泉首相がいう「小さな政府」とは、いつごろから使われている言葉で、どんな意味ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 「小さな政府」は、資本主義経済の矛盾が深刻化し、いわゆる「福祉国家」、福祉政策そのものを敵視する過程で出てきた議論です。「大きな政府」(ケインズ主義的政策と福祉国家)と対置される「小さな政府」(自由放任=弱肉強食の市場機構まかせ)という意味で使われています。
英国の経済学者・ケインズは、1929年の世界大恐慌に直面し、資本主義は自由放任にしておけば順調に発展するということでは、失業問題を解決できない、国家が財政支出を拡大し需要をつくりだすことによってこそ不況を克服できると主張しました。この考えは、恐慌に苦しんだ各国に急速に普及し、第2次世界大戦後アメリカをはじめ各国はこの政策を採用しました。
しかし、1970年代にはいり、インフレと不況が併存するスタグフレーションや財政破たんが進行するなかで、ケインズ的政策に反対し市場競争による価格の自由なうごきに信頼をおく新自由主義(新保守主義)の経済学(ハイエク、フリードマンがその代表)が優勢になり、保守政府の経済政策として採用されていきます。
1980年代のアメリカのレーガノミクス、イギリスのサッチャリズム、日本の臨調「行革」路線がその代表的な例です。たとえば、イギリスのサッチャー首相は(1)「ゆりかごから墓場まで」といわれた同国のすすんだ福祉制度の解体をはかり、(2)公営企業や公営住宅を民営化し、企業規制を大幅緩和、(3)付加価値税の増税と抱き合わせで所得税や法人税を減税、大衆の税負担をふやしました。この結果、失業者が急増し、貧富の差が拡大。このため、国民の反撃をよびおこし、退陣を余儀なくされました。
小泉首相の「構造改革」=「小さな政府」も、一口で言うと、徹底した「大企業優遇、金持ち優遇の政府」ということです。
多くの国で「大きな政府」を生んだ主因は、社会保障費と公務員人件費の増加だとされますが、日本の社会保障費も、公務員数も先進国の中でもかなり少ないのです。「小さな政府」の「小さな」は、主に国民への公的サービスへの財政支出を減らすことに照準が当てられているのであって、多国籍企業の国際競争力を維持増強させるためには必要とあれば「一層大きな政府」=軍事大国にでもなりうる、というのが過去の歴史が教えています。(喜)
〔2005・9・29(木)〕