2005年10月1日(土)「しんぶん赤旗」

志位委員長の総括質疑

これでいいのか小泉税制根本を問う


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パネルを示して追及する志位和夫委員長=30、衆院予算委

 九月三十日の衆院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長が行った総括質疑(大要)は次の通りです。

■サラリーマン増税 1人あたり十万円以上押しつけて「増税でない」は通用しない

 志位和夫委員長 私は小泉総理に増税問題について質問いたします。まずただしたいのは、自民党が総選挙で掲げた「政権公約」と増税のかかわりであります。

 自民党が「政権公約」で述べているのは、「『サラリーマン増税』を行うとの政府税調の考え方はとらない」。こう明記されているわけです。ところが総理は、一昨日(九月二十八日)の本会議での私の質問に対する答弁で、所得税・住民税の定率減税の廃止について、「サラリーマンだけでなく自営業者などすべての所得税納税者を対象とするものだから、いわゆるサラリーマン増税とは異なるものと考えている」。こう述べて、「年末までに全廃するかどうかを検討していく」とおっしゃられました。

 しかし、“定率減税の廃止は、政府税調の打ち出した「サラリーマン増税」ではない”というのは、およそ通用しない話だと、私はまずいいたいと思います。

 (資料を掲げて)これは政府税調が六月に発表した「論点整理」―サラリーマン大増税の方針として大問題になった方針ですけれども、この最初のページを開けますと、「平成十八年度においては定率減税を廃止する」と明記されております。そして何よりも、定率減税の廃止による三・三兆円の増税のうち、八割以上がサラリーマン世帯への増税となります。まさにサラリーマン直撃の大増税です。

 総理にただしたい。こうなってきますと、自民党が政権公約で「やらない」と約束してきた「サラリーマン増税」とはいったい何なのかということになってまいります。具体的にうかがいたいので、総理にお答えいただきたい。

 政府税調のこの「論点整理」を読みますと、所得税・住民税の配偶者控除と扶養控除について、廃止を含めた見直しによる増税の方向も打ち出しております。これも「サラリーマン増税」ではないとおっしゃるおつもりでしょうか。端的にお答えください。

 小泉純一郎首相 端的に答弁いたしますと、サラリーマンだけを対象にする税制でなくて、所得あるいは消費、法人資産、全体を考えるのが税制であります。そういうなかで、サラリーマンに関する、今いわれました控除の問題(志位「配偶者控除と扶養控除です」)、この問題につきましても、歳出面も考えながら、税体系全体のなかで考えなきゃいけない。サラリーマンだけを標的にするというだけの全体の税制改正ではありません。

 志位 私がきいたことにお答えになっていない。私がきいたのは、所得税のあり方をどうするかということじゃないんですよ。総理がお出しになった、この「政権公約」で述べている「サラリーマン増税」についてきいたんです。

 所得税・住民税の配偶者控除・扶養控除の見直し―廃止も含めた見直しと政府税調の方針はいっているわけですね。これは「サラリーマン増税」ではないんですかということをきいているんです。はっきりお答えください。

 首相 いわゆるサラリーマン増税という考えではない。それは歳出も考えながら、ある面においては、増税絶対しないという、そういう可能性はありません。いろんな選択肢のなかで、歳出等を考えながら、財源をどう捻出(ねんしゅつ)するかというなかでも考えなければならない問題だと思っております。

■“国民だまし”で庶民増税など認められない

 志位 結局いまのお答えは、配偶者控除・扶養控除の廃止も、「サラリーマン増税」ではないというふうにお答えになったわけです。しかし、配偶者控除と扶養控除を廃止した場合には、こちらは三・一兆円の増税です。こちらも八割以上はサラリーマン世帯への増税ですよ。定率減税の廃止、配偶者控除と扶養控除の廃止、あわせますと六・四兆円の増税です。このうち八割がサラリーマン世帯ということになりますと、五兆円がサラリーマンにかぶってくることになります。

 日本のサラリーマンというのは五千万人。ですから単純割りでいっても、サラリーマン一人に約十万円の増税をかぶせる。これをやろう、検討していこうというのが政府の方針だということになる。これが「サラリーマン増税」ではないというのは、とうてい通用しないと思います。

 私はここに、自民党の候補者が選挙中にまいたビラ、いろいろと持ってまいりました。これを見ますと、ずいぶん勇ましくいっています。

 たとえばこの方は、「サラリーマン増税は絶対に許しません」「政府税調が発表した、給与所得控除、配偶者控除の縮小と廃止を盛り込んだサラリーマン増税は許しがたい内容です」(議場内騒然)、こういっております。それからこの方は、「サラリーマン増税断固阻止。政府税調案を廃案へ」(騒然)。こういうふうにやった。同じようなビラが全国各地でまかれたわけですよ。こうやって選挙をやったわけです。

 選挙のときには「サラリーマン増税反対」を叫んで、選挙が終わればサラリーマン一人あたり十万円もの増税を「これはサラリーマン増税じゃありません」といいだす。こんな“国民だまし”のやり方で庶民に増税を押しつけるというのは、私は絶対に認めるわけにいかないということを、まず申し述べておきたいと思います。

 そのうえで私は、総理に、税制の基本問題についてのお考えをうかがいたいと思います。

■税制の基本的考え方 庶民には年3兆5千億円増税大企業・大資産家には年2兆2千億円減税――この路線を続けるつもりか

 志位 (パネルを示しながら)これは、小泉内閣の四年間で決まった増税と減税を一覧表にしたものです。

 左は庶民への増税ですが、まさに連続的な増税です。サラリーマン世帯には、配偶者特別控除の廃止に続いて、来年から定率減税の半減が実施に移されようとしています。

 お年寄りには、年金控除の縮小、老年者控除の廃止、非課税限度額の廃止、連続的な増税です。そしてこれに連動して、たとえば国民健康保険料、介護保険料にも、“雪だるま”式の負担増を強いる仕掛けになっているということも、この委員会でとりあげてまいりました。

 中小業者のみなさんには、消費税の免税点の引き下げで、“これまでも大変だったのが、いよいよ身銭を切らないと消費税を納められない。これでは商売は成り立たない”という悲鳴が聞こえてまいります。

 庶民のささやかな楽しみの発泡酒、ワインまで増税されました。

 そして、増税の合計額は年間で約三兆五千億円に達します。

 一方、大企業・大資産家への減税をご覧になってください。

 二〇〇三年度に研究開発減税、IT投資減税という大企業向けの特別の優遇税制がおこなわれました。年間一兆円を超す大もうけをあげているトヨタ一社で、年間で研究開発減税が五百億円もあてられています。

 それから(パネルの)一番下、「株式配当などの減税」とありますが、これは二〇〇三年度から施行されたもので、株でもうけた所得はほかの所得と分けて、分離課税にして、所得税・住民税合わせて10%を払えばいいという仕掛けを新たに導入しました。

 額に汗して働いている人たちよりも、お金を左から右に動かす錬金術のようなやり方でもうけている人の税金が低いという、こんな不合理な仕掛けはないと思います。

 こういうやり方で、大企業・大資産家への減税は、あわせて二兆二千億円です。

 私は、総理にうかがいたい。

 総理は「二〇〇六年度をめどに抜本的な税制改革の結論を得たい」と、こういうふうに述べておられますけれども、その際にも、この路線でいくんでしょうか。すなわち庶民には増税、大企業・大資産家には減税。これを続けるつもりでしょうか。私は、これは抜本的に見直すべきだと思いますが、見直す意思はないんでしょうか。

 首相 税制改正というのは、増減税だけを今、対象にされましたけども、要はいかに経済を活性化させるかということなんです。

 そういうなかで、私どもとしては、この四年間、ようやく民間主導の景気回復軌道に乗ってきた。失業率も減少している。倒産件数も減少している。そして、多くの大企業の利益が、だんだん中小(企業)に及んでくるような形にしていかなければならない。

 大企業にしても、あるいは高額所得者にしても、それなりの税負担をするということによって国庫に増収となってはねかえってくると(志位氏はいう)。大企業だけに重税を課せれば増収になるかというと、そうでもないんです。国際社会の情勢をよくみていかなきゃならない。

 各法人、企業は今、地域だけでなく、国を選べる状況になっています。一国だけが法人税についても高いと、その企業は逃げていきます。そして雇用にも影響してきます。大企業だけをいじめればいいという状況じゃない。われわれとしては、経済全体をみて、いかに経済全体を活性化するかというなかで、税制というものは考えていかなければならない。一部だけをみれば、全部、共産党は、減税がいいというのは分かっていますよ。しかし、そうやったら、国の財政はどうなるんですか。この点も、考えていかなきゃならない。

■企業の「国際競争力のため」は理由にならない

 志位 いま、大企業への増税の問題についていわれましたけども、法人税というのは減税につぐ減税で、一時、国税(収入)で二十兆円あったのがいま十兆円しかありませんよ。

 ですから、政府の資料をみても、フランスと比べても、日本の企業の税と社会保険料の負担は半分です。ドイツに比べても八割、イタリアに比べても六割ですよ。“国際競争力のため”というのは、これは理由にならない。

■献金の見返り大企業減税 最大・最悪の「既得権益」――“財界権益”にメス入れよ

 志位 私は、一つ具体的にききたい。

 ここに持ってきましたが、経団連が「平成十八年度税制改正に関する提言」というのを出しております。そのなかに例のIT減税、研究開発減税について、「平成十五年度税制改正で講じられた研究開発・IT投資促進のための両税制は、極めて重要な効果を持つことから、引き続き整備・拡充することが不可欠である」(図参照)と述べております。

 合計一・二兆円にのぼる大企業向けの研究開発減税、IT減税は、今年度限りの時限措置ですよ。ですから当然、やめるべきだと私は代表質問でうかがいましたけど、総理の答弁は「検討していく」という答弁でした。「検討」ということは、日本経団連の要求にしたがって延長することもありうるということでしょうか、端的にお答えください。

■時限措置の優遇減税―首相「やめる」とは言わず

 首相 このIT減税・研究開発投資減税はたしか、三年間の時限措置であると思います。それが来年には切れるということでありますので、全体の研究投資開発の効果等を見極めながら、日本としては最先端のIT国家になろうという目標を掲げています。

 おかげさまで今、最先端のIT国家になりました。現在では、世界の最先端のIT国家になりつづけようという目標を掲げています。そういう点を考えながら、研究開発を企業がやってくれる。税金を使わないで自ら投資してくれる点について、経済効果をよく見極めて今後判断していかなければならない問題だ。

 志位 結局、やめるとは言わないわけですよ。継続の方向が色濃くにじんだ答弁でした。

 庶民への減税は、「恒久的減税」としてはじめた定率減税を平気で廃止する。しかし大企業への減税は時限措置が切れて終わっているものを、やめるといわない。ここには経団連との深い関係があると思います。

 今日、二〇〇四年の政治資金収支報告書が発表されましたけど、研究開発減税の恩恵を受けている大企業六社―トヨタ、ホンダ、松下電器、武田薬品、住友化学、新日鉄、この(六社の)自民党への献金額は、一億九千八百八十九万円です。この六社でこの二年間に一千七百八億円の研究開発減税の恩恵を受けている(表参照)。つまり献金の見返りに減税の恩恵を受ける、これがいまのやり方じゃありませんか。

 総理は「既得権益を打破」するというけれど、ここに最大・最悪の財界権益という「既得権益」があるではないか。ここにメスを入れないのでは、「改革」の名に値しないということを最後に述べて質問とします。(拍手)


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