2005年10月2日(日)「しんぶん赤旗」
主張
施設の食住費負担増
利用者に必要な介護もれなく
介護保険法の改悪に伴い、十月から介護施設の居住費と食費が保険給付の対象から外れ、原則として利用者の全額自己負担になりました。
国会で介護保険改悪法が、自民党、公明党、民主党の賛成で成立したのは六月下旬です。わずか三カ月後の実施で、現場では不安と困惑が隠せません。
■年金を上回る負担も
実施を前にした、日本共産党国会議員団の申し入れにたいし、尾辻厚生労働相は、「必要な介護を受けられないということがあってはならない」とこたえています。
負担増によって、入所をあきらめたり、利用を抑えたりすることのないように、国と自治体の対策の強化が求められます。
対象となるのは、生活の場である「特別養護老人ホーム」、リハビリ中心の「老人保健施設」、医療ケアを受ける「介護療養型医療施設」の三施設です。
市町村民税・世帯非課税で年金などの収入が八十万円以下の人を除いて、入所者の多くが、月数万円以上の値上げとなります。政府は低所得者に配慮しているといいますが、年金を上回る負担となる人も少なくありません。
在宅サービスに欠かせない、ショートステイの滞在費と食費、デイサービスの食費も保険給付から外れます。デイサービスには利用者の負担軽減措置が盛り込まれておらず、低所得者も含め、負担増を押し付けられる仕組みです。
政府は、“施設サービスと在宅サービスとの費用の不均衡を是正する”といって、今回の負担増を正当化しました。しかし、在宅にも施設にも負担増を強いているのが実態であり、導入の理由はごまかしです。
地方自治体のなかには、“不均衡の是正”というなら、在宅サービスこそ充実すべきだとして、在宅のデイサービス利用者への負担増を求めず、介護保険の対象外となる食事提供加算分(約四百二十円)を独自に補助する方針を打ち出したところもあります。
食費と居住費の保険給付からの除外は、施設の運営にも影響します。
施設への介護報酬が減り、ケアの質が維持できるのか懸念されます。
また、一定の所得(市町村民税が世帯非課税でない)の人には、食費と居住費の上限がありません。青天井となり、高額のホテルコストをとっている有料老人施設との境界がなくなるのではないか。経営上の理由で、一定所得以上の入所に偏り、事実上、低所得者の排除につながるのではないか―。政府と自治体は実態を調査する責任があります。
■減免制度の拡充を
介護保険が導入されてから五年余り、利用者や住民の要望で、改善させた点もあります。
利用料や保険料の減免措置を実施する自治体が全体の四分の一まで広がりました。
こうした運動にとりくんだ日本共産党は、自治体独自の負担減免措置に国がペナルティーを科すなどの干渉をしないよう要求。政府も「まったく考えていない」(厚生労働相)とのべています。
国会論戦では、日本共産党議員が、政府に負担の重さを認めさせる質問を行い、従来型個室の負担軽減の経過措置に結びつきました。
負担増によって必要な介護を受けられない事態が広がるようなことがあってはなりません。実態調査や減免制度の拡充を求めるとりくみをさらに広げていくときです。