2005年10月2日(日)「しんぶん赤旗」
庶民増税ストップ
このムダ遣いに徹底したメスを
小泉内閣は、総選挙中の公約に違反して、所得税の定率減税の全廃や配偶者・扶養控除の廃止など、庶民増税にひた走ろうとしています。でもちょっと待ってください。もっとやるべきことがあるはずです。庶民には大増税、大企業には減税という、ゆがんだ政治を改めるべきです。そして、軍事費や大型公共事業など、予算の無駄遣いに徹底したメスを入れるべきです。小泉首相も任期中は歳出削減など行財政改革に専念すると約束したはず。おかしな予算のつかい方は、たくさんあります。
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■政党助成金
政党は、国民の浄財に依拠してこそ国民主権の立場にたった政党本来の自主的活動ができます。
ところが、日本共産党以外の政党は、個人献金を集める努力を惜しみ、もっぱら税金に依存。
国民一人あたり二百五十円の税金を原資にする政党助成金は一九九五年から二〇〇四年までの十年間で総額三千百二十六億円にのぼり、自民、民主、公明、社民各党が山分けしてきました。
〇四年の各党収入に占める政党助成金の割合は、民主党83・6%、自民党は58・8%、社民党52%、公明党18・4%。「官から民へ」と叫びながら自らは「国営政党」となっています。
助成金の使い方は野放図で、貸し植木代、タクシー代、高級料亭などでの飲み食い、党大会の会場費、自動車税の支払い、テレビCM放映料などに及んでいます。
■関空2期工事
二〇〇七年の使用開始に向けて建設を進めている関西国際空港の二期工事は、総額一兆円規模の事業です。
関西空港は現在、一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力を持っています。ところが、その実績は十万回しかありません。需要の見通しがないのに二本目の滑走路建設を進めています。
関空二期工事は自民党内からさえも「三大バカ事業の一つ」(太田誠一行政改革推進本部長、当時)という声さえあがっていました。開港が計画されている神戸空港と大阪空港とあわせて三つも空港が関西にひしめくことになります。ところが、公明党から入閣している北側一雄国土交通相と、谷垣禎一財務相の昨年十二月の合意文書では需要確保へ利用者・就航促進へ「さらなる努力を行う」とうたいました。「空港のために需要をつくる」逆転した発想にほかなりません。
■第二東名 高速道路
道路公団は十月一日から民営化されたものの、ムダの代名詞の建設は進んでいます。第二東名・名神高速道路。東京から神戸まで、全長約四百六十キロメートルの高速道路です。総事業費は実に約九兆二千億円に達します。
第二東名は、時速百四十キロ走行を想定しています。現在の東名よりも幅を広げて六車線にし、さらにカーブや高低差を減らしました。そのため、トンネルと橋が全体の六割も占めるという構造に。これが建設費が高騰する原因になりました。一メートルあたりの建設費は単純計算で二千万円にもなります。
ところが高速道路の制限速度は最高百キロ。この高速道路が完成しても百四十キロでは走ることはできません。「東名高速の渋滞解消」から「東海大地震の代替道路」へと建設目的も揺らいでいます。
■談合企業の不当なもうけ
刑事事件に発展した日本道路公団や国土交通省が発注する鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件。公正取引委員会は九月二十九日、談合組織メンバーの三菱重工業や新日本製鉄など計四十五社に独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除勧告しました。
公取委が談合をしていたと認定したのは、二〇〇二年―〇四年に道路公団や国交省三地方整備局が発注した約二千六百億円分の工事。公取委は談合による不当利得を受注額の18・6%とみており、これで試算すると今回の事件で談合企業は四百八十億円余の不当利得を得たことになります。
これらの工事の原資となっているのは国民の払った税金や通行料。談合により国民は四百八十億円余のムダな金を支払わされ、それが談合企業の不当なもうけになったことになります。
■目的不明のダム計画
総事業費三千三百億円、計画発表から約四十年が経過した熊本県の川辺川ダムは、反対運動がねばり強く続けられ、いまだに本体工事にいたっていません。
一昨年五月の福岡高裁判決で、利水計画が事実上無効とされて以降、農水省と地元自治体が中心となって新たな利水計画の策定を進めましたが、作業が難航。国交省は九月十五日、熊本県収用委員会の勧告に従い、強制収用の申請を取り下げました。
地元の農民、漁民らは「ダムによらない治水を考えるべき」「ダムと利水を結びつけるやり方が間違っている」と事業断念を望んでいます。
このほか、群馬県の八ツ場(やんば)ダム(総事業費四千六百億円)など、治水上も利水上も根拠を失ったダム計画が各地にあります。
■米軍「思いやり予算」
「思いやりの精神で米軍駐留費の分担増に応じる」――。金丸信防衛庁長官(当時)の、この言葉から始まった「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)。米軍基地で働く従業員の労務費、施設建設費、光熱水料、訓練費を日本の税金で負担しています。
基地そのものの提供を除き、在日米軍の駐留経費は米側が負担すると定めた日米地位協定にも違反するもので、一九七八年からこれまで四兆七千百二十八億円をつぎ込みました。
「思いやり予算」で建設された施設には、米兵のための家族住宅、運動施設、学校、育児所、銀行、劇場、ショッピングセンター、教会まであります。
司令官用の家族住宅(二百三十四平方メートル)は、日本の平均的な公営住宅の四倍以上。居間だけで三十三畳大もあります。
■対ソ戦想定の戦車や軍艦
防衛庁・自衛隊が発足して以来、政府が軍拡の口実にしてきたのは、「ソ連の脅威」。しかし、一九九一年のソ連崩壊後も、対ソ戦想定の武器を買いつづけています。
たとえば、90式戦車(一両=八億円)。上陸してきたソ連軍を迎え撃つことを想定していました。ところが、調達開始(九〇年度)の直後に、ソ連が崩壊。それでも買い続け、約三百両を北海道を中心に配備しています。重量が約五十トンもあり、一般の橋や道路を壊してしまうため、分解して運ばなければなりません。
防衛庁は、二〇〇六年度の概算要求で十一両の追加を求めています。
イージス艦(一隻=千三百六十五億円)も、ソ連軍機などに対する米空母護衛を目的に開発されたものです。
同時に百以上の目標を探知し、十以上の標的を同時攻撃できるハイテクシステムが“自慢”で、政府は八八年度に予算化。ところが最初のイージス艦が完成したのは、ソ連崩壊後の九三年。なのに、現在六隻も保有しています(うち二隻は建造中)。
■巨額の「ミサイル防衛」
小泉政権が二〇〇三年に導入を決定した「ミサイル防衛」。二〇一一年度末までに八千億―一兆円もの税金をつぎ込む大計画です。すでに二千二百六十六億円を投入。〇六年度の概算要求でも、千五百億円を求めています。
「ミサイル防衛」は、敵国の弾道ミサイルを、新型ミサイルで撃ち落とすシステムです。ブッシュ米政権が先制攻撃戦略の一環として開発・配備を推進しているものですが、技術的には未完成品。確実に撃ち落とす保証はありません。
防衛庁は、未完成品であっても、とりあえず配備し、実験・改良していくという方式の米国に後れをとらないようにと、次世代「ミサイル防衛」システムの日米共同開発まで要求。際限のない新たな軍拡の道に足を踏み入れています。