2005年10月8日(土)「しんぶん赤旗」
主張
郵政法案審議
だれが民営化を求めたか
小泉政権と自民党、公明党は、“郵政民営化法案は総選挙で国民に信任された”として、週明けの採決を狙い、一気に衆院を通過させようとしています。
しかし、与党の小選挙区の得票は49%にすぎません。「郵政民営化についての国民投票」で信任されたとは言えません。
小泉首相は、郵政職員の数の多さを強調して、民営化すれば税金の節約になるかのように描きました。郵政事業には税金が一円も投入されていないことを隠した宣伝です。法人税率より高い「利益の50%」を郵政公社が国庫納付する現行制度に触れず、民営化で法人税を払うようになるとのべて国の収入が増えるかのように説明しました。
国民に真実を隠したまま法案を強行するなど、許されることではありません。
■「はるか以前」から要求
「だれが民営化を求めてきたのか」という問題も、小泉首相が隠してきた重要な事実の一つです。
首相は「民営化で多様でより良い商品やサービスが展開される」と言っています。新サービスとして政府が押し出してきたのは郵便局のコンビニ化ですが、そんなことを国民が求めているわけではありません。
民営化を要求してきたのは日米の金融業界と米国政府であり、法案はその要求に応えて作られました。六日の衆院本会議、七日の特別委でこの点をただした日本共産党の塩川鉄也、佐々木憲昭両議員に、竹中郵政民営化相は「小泉首相はアメリカが要求するはるか以前から郵政民営化の必要性を主張してきた」から指摘は当たらないと繰り返しました。
どっちが先に言い出したかなどというのは、議論の焦点を意図的にずらす逃げ口上にほかなりません。
首相が国会で郵政民営化を初めて取り上げたのは、一九九二年末に郵政相に就任して以降のことです。その「はるか以前」から、日本の大銀行や保険会社は郵貯・簡保の縮小・廃止、民営化を主張してきました。首相は郵政大臣に就任する直前に、銀行業界から郵貯「肥大化」を阻止するよう要請を受けています。
九〇年代に入ってすぐ、民営化論のもう一方の主役として米国の保険業界や経済団体と、その意を受けた米国政府が表舞台に登場しました。
米国政府は毎年、規制緩和要求や保険協議などで郵貯・簡保の廃止、民営化を日本政府に突きつけています。昨年九月の日米首脳会談でブッシュ大統領が直接、小泉首相に郵政民営化が進んでいるかと確認したほど熱心です。
前国会の参院での審議で日本共産党の大門実紀史議員の追及に、郵政民営化準備室と米国関係者が十八回も協議を重ねていたことを竹中大臣が認めました。米通商代表部が三月に発表した報告書は、小泉内閣がまとめた郵政民営化の「基本方針」には「米国が勧告していた修正点が含まれている」と評価しています。
動かせない事実が、郵政民営化のバックにアメリカが付いていることを示しています。
■米国と投資家が勝利者
「もうけるのはだれだ?」。こんな見出しで米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(八月二十六日付)が、民営化で郵貯・簡保の資金がどこに流れるかという米大銀行の分析を紹介。米国債や株式市場が「大勝利者」になるとのべています。
金融業界や米国の身勝手な要求に従い、そのビジネスチャンスと利益を保証する郵政民営化法案は徹底審議の上、廃案にするよう求めます。