2005年10月9日(日)「しんぶん赤旗」
“温暖化の現場”を報告
東京でシンポ
島、氷河、北極に異変
「南太平洋フィジー諸島で乾燥期が長引いた」「ヒマラヤの氷河湖が拡大している」「北極圏の冬季が短くなっている」――。地球温暖化によると考えられる影響の“目撃者”三人が、東京都内で八日、WWF(世界自然保護基金)ジャパン主催のシンポジウムに招かれて体験を語りました。
フィジーのカバラ島に住むペニーナ・モーゼさんは「生まれて四十年、ずっと島で暮らしてきたが、これまでにない異変に気づいた」と話し、海岸線の浸食、暴風雨の増加、サンゴの白化現象の実態などを証言しました。また、島には川がなく雨水にたよる生活です。乾燥期が長引いて飲料や洗濯の水が不足したり、イモなどの作物がしおれてしまい、「このままでは島を出て行くしかない」と涙ながらに語りました。
ネパールのノルブ・シェルパさん(39)は、ヒマラヤの氷河が溶けたために、一九八五年に氷河湖の水が増えて決壊、土石流が自宅と農場を押し流した経験を語りました。その後も、「約二十年、登山ガイドを続けるなかで、氷河湖があちこちで拡大しているのを見てきた」と、巨大な氷河湖決壊が周辺の村に被害を及ぼす危険性を訴えました。
気候変動による北極先住民への影響を記述する活動をしている、米国のマリン・ジェニングスさんは、「北極圏では狩猟期間が短くなり、イヌイットの人たちは自給自足できなくなった。いまの生活様式はせいぜい十年しかもたないだろう。温暖化の問題は、イヌイットにとっては抽象的な話ではなく、いまの瞬間の現実の問題だ」と話しました。