2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」
青天井に仰天
住民税課税世帯 「5万円増、まさか」
介護施設の食費・居住費
十月実施の介護保険法改悪で特養ホームなど施設の食費・居住費が保険給付の対象から外れ全額自己負担になりました。とくに一定以上の収入がある住民税課税世帯に属する人の負担額は、施設側が利用者との契約で設定でき、事実上の青天井となります。介護報酬引き下げによる減収を背景に、国基準の倍以上の負担を求める施設も現れ、利用者・家族から悲鳴が上がっています。(内藤真己子)
「まさか月五万円以上も上がるなんて、想像もしとらんかったですよ」。憤まんやる方ない表情でこう語るのは、山口県宇部市の天満屋是清さん(70)=年金生活=。母のミサコさん(90)=要介護5=が入所する介護療養型医療施設から十月以降の負担額の説明を受けたのは、九月三十日のことでした。
ミサコさん自身は住民税非課税ですが、同一世帯の是清さんは住民税課税。ミサコさんの負担額は施設との契約で決まることになります。契約の際、是清さんに示された説明書には食費が月五万四千円。居住費(相部屋)は月二万一千円とありました。
これにたいし国が「平均的な費用額」としている「基準費用額」は食費が月四万二千円。居住費は同一万円(相部屋)です。しかし厚生労働省は住民税課税世帯に属する人の負担額について「『基準費用額』を踏まえて設定する必要はない」との見解を表明、“契約”の名のもとに事実上の青天井を容認しています。
このためミサコさんの窓口負担の総額は、一割負担の利用料も含め改悪前の月六万三千五百円から、同十一万五千円へ一気に跳ね上がることになりました。
「ビックリ仰天しました。しかし私も持病のリウマチがあり、寝たきりの母親の介護はできません」。是清さんは、やむなく費用負担の契約書に署名なつ印しました。
「政府は『契約』といいますが家族は施設の言い値を承諾するしかありません。国は医療にも食費・居住費の保険外しを持ち込もうとしており大変なことになる」。是清さんは警鐘を鳴らします。
宇部市介護保険課には八月以降、負担に関する問い合わせが約六十件寄せられました。九月末に初めて負担増額を示され困惑しているとの声も十件以上あり、「個室で月八万円の負担が月十八万円に上がるといわれた。払えないので相部屋を紹介してほしい」との訴えもあったといいます。
こうした実態は全国で発生。栃木県宇都宮市でも、介護療養型医療施設に入所する住民税課税世帯の人が、食費月五万六千四百円、居住費(相部屋)同一万五千円の高額な負担を求められる例が出ています。
■厚労省が高値誘導
中央社会保障推進協議会・相野谷安孝事務局次長の話 食費・居住費の全額自己負担化にともない、保険から施設に支払われる介護報酬が大幅に引き下げられました。食費・居住費を「基準費用額」で徴収しても、特養ホームでは一ベッド当たり月一万円強の減収とも試算され施設の経営は苦しい。それを承知で厚労省は、住民税課税世帯の入所者からいくら徴収してもいいとばかりに高値を誘導しています。こんな改悪は即刻中止すべきです。また、自治体独自の補助制度を広げるなどの取り組みが必要です。