2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」
国会の視点
衆院特質疑前から参院日程
「郵政」めぐり異常事態
国会で異常事態が起こっています。郵政民営化法案について、衆院郵政特別委員会の質疑に入る前から、参議院の郵政民営化特別委員会は理事懇で、十三日の総括質疑とテレビ中継、各党の時間割まで決めました。かつてないことです。
参院の動きはあらかじめ十一日の衆院通過を前提としたものですが、肝心の衆院郵政特別委員会の理事会では採決日程は提案すらされていません。しかし、法案の週内成立をにらんで十一日衆院通過をはかる日程は国会内で既成事実化しています。
■民主も容認
表向きは審議続行を装いながら、裏では出口まですべて決めている―こうした異常な運営を与党がごり押しするというだけでなく、民主党が「もう審議はいいのではないか」(国対幹部)と容認していることも重大です。
政府・与党は総選挙の結果をもって、郵政民営化は「多くの国民の信任」をえたとして、一気呵成(かせい)に成立させようとしています。しかし、ここには日本共産党の志位和夫委員長が代表質問で指摘したように、大きな問題が横たわっています。
一つは、“総選挙で決着がついた”という論の虚構です。自民・公明は小選挙区制度のカラクリで議席は圧倒的多数を獲得しましたが、小選挙区でえた得票は49%にすぎません。「郵政民営化の是非を問う」といって審判をあおぎましたが、「民営化賛成」とこたえた国民は半数に満たなかったのです。この結果をもって「多くの国民の信任をえた」とは到底いえるものではありません。国民のなかでは賛否相半ばしているというのが実態です。
マスコミも「国民の支持率よりもはるかに水ぶくれした三分の二勢力と強腰の首相が、国民支持を錯覚して独裁に陥らないことを願わずにいられません」(「東京」、九月十九日付)と指摘しています。選挙後の共同通信の世論調査では、郵政民営化法案について「慎重に審議すべきだ」が53%で「特別国会で成立させるべきだ」の37%を大きく上回っています。
小泉首相、与党はこうした指摘に真摯(しんし)に耳を傾け、向きあうべきです。
■反論できず
二つは、総選挙で首相は真実を語らなかったという問題です。郵政事業は独立採算で一円の税金も使っていないこと、郵政公社のままでも利益の半分は国庫に納付する仕組みになっていることを一切語らず、民営化が国の財政に貢献するかのようなウソを最後まで言い続けました。「この選挙結果は国民をあざむいてえた結果だと、断ぜざるをえません」(志位氏)
こうした指摘に小泉首相はまともに反論できずにいます。虚構の圧倒的多数を背景に、まともな審議もなしにスピード成立をはかるなどということは許されません。
(北村隆志)