2005年10月15日(土)「しんぶん赤旗」

主張

郵政民営化法成立

国民に良いことは少しもない


 郵政民営化法が自民党、公明党の賛成多数で可決、成立しました。

 民営化法は、郵政三事業を郵便、貯金、保険、郵便局の四つに分割して株式会社化します。

 このうち、貯金会社と保険会社の株式については、十年間の移行期間内に完全処分するとしています。

 「あまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする」と定めた郵貯法第一条を廃止するなど、郵貯・簡保の全国共通サービス義務付けをなくします。

■日本経済の大損失に

 くらしに欠かせない基礎的な貯蓄・保険サービスをあまねく提供してきた郵貯・簡保は、その公的な役割をはぎとられ、単なる民間銀行、保険会社へと変質を迫られます。

 郵便局の経営の柱である郵貯、簡保が撤退するかどうかは経営者の経営判断に任され、郵便局の存続は極めて不安定になります。先行して民営化を進めたドイツやニュージーランドでは郵便局網がずたずたに破壊されました。郵政事業を所管する麻生総務相でさえ、諸外国に民営化の成功例はないと答弁しています。

 しかも、竹中郵政民営化担当相が認めたように、郵貯は公社を維持した場合は黒字となって国庫に納付金を納められる一方、民営化した場合は赤字で法人税もゼロになります。

 郵貯・簡保が普通の株式会社になるということは、資金力のあるものが大株主となって経営を支配できるということです。

 この点で思い起こすのは、阪神電鉄株を買い占めた投資集団の「村上ファンド」が、阪神タイガース株の上場を提案している一件です。多くのファンに愛されているタイガースを投機の対象とする動きに、ファンは不安を感じています。

 国民共通の財産が一部の大株主に奉仕するようなことは納得できません。加えて、民営化後の貯金、保険会社には電力やNTTなどにかけられている外資規制がありません。これは、日本に進出しているアメリカ資本を代表する在日米国商工会議所が強く要求してきたことです。

 資金量の豊富なアメリカなどの外国資本が貯金、保険会社を買収する危険をはらんでいます。実際にニュージーランドでは、民営化された郵貯がオーストラリアの銀行に買収されました。郵貯、簡保が外国の株主のため、米国のために働く会社になったら、日本経済にとって、とてつもない損失です。

 十三日、参院の特別委員会で質問に立った日本共産党の大門実紀史議員に、小泉首相は、郵貯の振込手数料は民営化で「上がるかもしれないし下がるかもしれない」と答えました。竹中大臣は、アメリカ議会で米政府高官が、日本側の「重要人物」と郵政民営化で毎週会合をしてきたと証言したことについて追及され、「よく分かりません」―。

 基礎的なサービスがどうなるか、民営化に対する米国政府の圧力など法案の根幹にかかわる質問にすら、まじめに答弁しないありさまです。

■多数をかさに着た暴走

 小泉首相が「郵政民営化の是非を問う国民投票」と位置づけた総選挙で、与党の小選挙区得票率は49%にとどまりました。51%の国民は民営化法案に反対したことになります。

 自民党は、第一党に有利な小選挙区制によって、得票率をはるかに超す議席を得たのです。

 それにもかかわらず、衆参ともに、わずか三日の審議で採決を強行するなど、虚構の多数議席をかさに着た暴走というほかありません。


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