2005年10月15日(土)「しんぶん赤旗」

ベルリンの抵抗博物館って?


 〈問い〉 ドイツには、公的な抵抗運動の博物館があるそうですが、どんな博物館ですか? 日本では、戦争に反対して犠牲になった人々を顕彰する公的な施設がなぜないのでしょう。(東京・一読者)

 〈答え〉 人類史上最大の6000万人といわれる死者をだした第2次世界大戦を記憶する戦争記念碑・記念館とのあり方は、日本とドイツでは大きな違いがあります。

 ドイツでは、強制収容所跡記念館のようにドイツ人による加害を記録するものと、反ナチ・反戦抵抗運動の犠牲者の公的な顕彰碑・館が数多く存在します。しかし、日本には、戦没者の追悼や戦争被害を記録するものはありますが、加害の記録は少なく、反戦運動犠牲者を顕彰する公的な記念館等はほとんどありません。

 ベルリンにあるドイツ抵抗博物館は、ナチスが支配した12年間にさまざまな形で抵抗した人たちを紹介する公立博物館で、ベルリン市と国が半分ずつ財政負担しています。館内には、ヒトラーに対する軍人のクーデターグループをはじめ、学生反ナチ活動家グループ「白バラ」やドイツ共産党(KPD)やドイツ社会民主党員の活動、ナチスに取り込まれたキリスト教会に抗してナチ反対を貫いたカトリックの神父やプロテスタントの牧師の活動、ユダヤ人、シンティ・ロマ(ジプシー)の抵抗、ユダヤ人をかくまって援助した人、強制収容所での蜂起…などが展示されています。

 抵抗博物館は、ヒトラーに対する軍事クーデターを企てたシュタウフェンベルク伯爵らの遺族が1953年、処刑が行われた国防省跡に小さな碑を建てたのが始まりで、67年には、ヒトラーに抵抗した軍人の資料館になり、89年、ドイツ全土のレジスタンス活動を紹介、展示する博物館となりました。毎年7月20日に連邦大統領や首相が出席して追悼式が博物館の中庭で行われています。

 このほか、ドイツには、反ナチ抵抗運動を追悼する、プレッツェンゼー追悼所、「白バラ」抵抗運動記念碑、フンボルト(旧ベルリン)大学中庭の記念碑、ゲオルク・エルザー追悼所などがあります。

 しかし、ドイツでもこうした施設が戦後すんなりとできたのではありません。60年代から活発化した青年学生運動が「祖父や父はナチの時代に何をしたのか。なぜナチスに抵抗しなかったのか」と問うなかで、抵抗運動犠牲者への顕彰につながったのです。

 一方、日本では、小林多喜二のように戦争に反対したため、拷問で殺された人々(拷問で虐殺されたり獄死したりした人が194人、獄中で病死した人が1503人―治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟調べ)にたいして、政府は公式にはその事実さえ認めず、犠牲者の顕彰どころか加害者の処罰、被害者救済もないままです。(喜)

 〔2005・10・15(土)〕


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