2005年10月17日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」 市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は、十六日放送のNHK「日曜討論」に出席しました。各党の出席者は、自民・武部勤幹事長、公明・冬柴鉄三幹事長、民主・鳩山由紀夫幹事長、社民・又市征治幹事長。司会は、NHKの山本孝解説委員。
■小口預金者守る地域からの共同を
特別国会で自民、公明などの強行で成立した郵政民営化法について、武部氏は「改革の本丸だ。徹底的にムダを省く、簡素で効率的な小さな政府をめざす」と発言。鳩山氏は「自民党ではできない改革の道を示さなければならない」とのべました。
市田氏は、次のようにのべました。
市田 今度の法律の成立で、郵便貯金、簡易保険の全国共通サービスの義務付けがなくなったわけですね。小口の金融をやるかどうかは経営者の判断にまかされることになったわけですから、小口預金者の基本的な人権をどうやって守っていくか、小口預金者がサービスから排除されるという事態を引き起こさないために地域からの共同、地域の人と手を携えて郵便局を守る。より中長期的にはドイツやニュージーランドではそうなっていますけれども、公的な金融機関の再建を目指して、頑張っていきたい。
もう一点、衆参あわせて特別国会で実質三日間だけの審議でした。委員会でも問題にしましたけれど、この郵政民営化の推進にあたって週一回、日米の関係者で協議される、日本の主権にかかわる重要問題も明らかになったわけで、ひきつづき問題にしていきたいと思います。
■政府系金融機関統廃合― 一つにするのは暴論
政府系金融機関の統廃合問題が議論になり、武部氏は「もともと民業の補完だった。政策金融の目的をすべて洗い直す」と発言。鳩山氏は「(統廃合の)方向は正しいと思う」としながら、「借り手不在にしてはいけない」とのべました。
市田氏は、次のように指摘しました。
市田 八つをひとくくりにして全部を一律に論じるのは間違っていると思います。その中でも、廃止すべきもの、残すべきものがあると思います。
日本政策投資銀行は例えば、むつ小川原の開発だとか、都市再生などのムダな公共事業に(融資する)仕組みになっているわけですよ。そういうところは廃止すべきだと思います。
しかし商工中金とか中小企業金融公庫、国民生活金融公庫は民間銀行などが貸し渋り、貸しはがしをやっているときに、低利の(融資をする)、また国民生活金融公庫などは原則無担保ですよね。やっぱり中小企業、零細企業を支える大きな役割を果たしてきたわけです。それは公共的な性格を持たせて、残すべきだし、拡充すべきだと思います。
だから八つを全部一律にして一本にすべきだと言うのは暴論、無理だと思います。
■国民サービス切り捨ての「公務員改革」は間違い
国家公務員削減問題について、武部氏は、政府の経済財政諮問会議で「五年間で5%の純減」、人件費では「十年間でGDP(国内総生産)比半減」という数字が出ていることなどに触れ「数値目標が必要だ」と発言。鳩山氏は「国は外交、安保だけやることにすれば、公務員の数をぐーっと縮められる」「いまの人事院勧告は十分でない。中小企業(の給与)も含めるべきだ」とのべました。
市田氏は、次のようにのべました。
市田 ムダは省くべきだと思うんです。まず日本が「大きな政府」なのかどうか、ということについて共通の認識にしておく必要があると思います。
人口千人あたりで見れば日本の公務員はイギリスの半分で、フランスの三分の一だし、アメリカの四割なんです。公務員は少なければ少ないほど良いというのはやはり、私、間違っていると思うんです。憲法二五条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとしており、福祉とか暮らしを守るとかいうのは国の責任だと思うんですね。公務員を減らすことによって国民へのサービスが切り捨てられるような公務員制度改革は間違っていると思います。
例えば高級官僚だとか、市民運動などへのスパイ活動ばっかりやっているような公安調査庁をなくすだとかね。また、国家公務員の人数は全体で六十一万五千人ですが、一番多いのは防衛庁と自衛隊ですよ、これは二十五万二千人ですね。こういうところを聖域にしないできちんとメスを入れていくというのは必要だと思いますが、「小さな政府」という名目で国民サービスや暮らし、福祉を切り捨てて国民に重い負担をかぶせるというやり方は、正しくないと思います。
■議員年金―国会議員の特権廃止を
国会議員の互助年金制度改革について、市田氏は次のようにのべました。
市田 議員年金問題で考えるべき最大のポイントは、国会議員の特権を廃止するというところにあると思います。一九五八年に始まりましたが、そのときの議論で国庫負担は事務費程度ということで、国会議員の互助制度としてスタートした。しかし受給者がだんだん増えてくる中で、国庫負担が今七割を超えている。ここにメスを入れようと。わが党としては国庫負担をゼロにして、そのためには本来の互助制度に戻るわけですから納付金の範囲で運営する、そうなれば現職の議員は大幅にやはり受給額が減ります。
現に受給している人はどうするか。これは移行期の経過措置として、支給額を減らしたり、最高限度額を決めるだとか、あるいは生活実態がどうか、また地方議員年金との併給問題もあるわけですね。そういう問題などについてはきちんと議論していく必要があると思います。
これは政党間の争いというよりも、議員の特権廃止、現行制度の廃止という点でほぼ一致しているわけですから、移行期の問題をどうするかを各会派の協議会で詰めて、議論をしていけばいいんじゃないかと思います。
■イラク自衛隊派兵―「撤退すべきだ」は国民の七割
十二月中旬に派兵の期限切れが迫っているイラク駐留の自衛隊について、武部氏は「まず第一に期限ありきではない」とのべ、駐留延長もありうると表明。冬柴氏は、イラク派兵について「アメリカにいわれてやっている仕事じゃない。国連決議にたいして、自主的、自発的に何ができるかという観点から、いまの支援方法に入っている」と、改めて合理化しました。
市田氏は、次のようにのべました。
市田 NHKの世論調査で、七割以上の人が「撤退すべきだ」という答えを出しているし、アメリカ国内の世論調査でも、六割の人が「撤退すべきだ」と。それから、米軍がイラクの国内でおこなった世論調査で、米軍主導の多国籍軍駐留に71%が「反対だ」と(答えている)。
最近、ブッシュ政権支持の保守系の新聞である「ウォール・ストリート・ジャーナル」で、アメリカの軍隊の司令官も米軍の駐留こそがテロの根源になっているということを自ら語っているわけですね。「反乱勢力の勢いを鈍らせる最善の策は、米軍の撤退開始だ」ということまで、米軍人が語っている。
もともと、イラクへの侵略戦争は、さきほど(公明党・冬柴氏は)「国連決議があって正当だ」とおっしゃったけれども、大量破壊兵器はみつからなくて、パウエル氏(前米国務長官)も「あれは汚点だった」と言っているわけですね。
「なかなか(大量破壊兵器は)みつからないじゃないか」とこのテレビ討論でも何度も議論になった。「イラクは日本より面積が広いからだ」と冬柴さん、おっしゃった。(イラクは日本の)一・二倍ぐらいで、ほとんど違わないんですよ。そうしたら、今度は「砂漠があるからだ」とおっしゃった。さらには「旧日本軍の毒ガスがチチハルでみつかったのは、六十年もたってからだ。時間がかかるんだ」と、こういう議論があった。
私は、そういう問題について、あいまいにしたまま、ああいう自衛隊の派遣をやったということについて、反省がないと駄目だと思います。自衛隊は期限を決めてすみやかに撤退すべきです。